おきなわ連載 vol.4

page design: MassaAquaFlow

okinawa2

双方向のコミュニケーションと
時間をかけて聴き手を育てる作業。

野田隆司(桜坂劇場 / Music from Okinawa)

富山県南砺市に1991年から続くワールドミュージックのイベント「スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールド」。会場になるのは、合掌造りの集落で有名な世界遺産の白川郷近くの福野という町。アクセスが良くはないこの場所に、毎年地球の裏側からユニークなバンドが訪れる。その音楽を求めて全国各地からファンが集まってくる。ある時期から東京のプロモーターに委ねていた出演者のブッキングを自前で行うようになり、滞在型のワークショップや、独自のユニットの誕生など新たな動きにつながったという。
スティール・ドラムのワークショップを通じて、スキヤキ・スティール・オーケストラが誕生し、長期のワークショップで制作されたモザンビークの巨大人形は、今やスキヤキの顔だ。日本、韓国、メキシコ、国籍も音楽ジャンルも超えて結成されたバンド、クアトロ・ミニマルは、海外の音楽フェスティバルに招かれ、アメリカ大陸をツアーする。その動きは実に活発だ。

もともとはこの土地にはなかった音楽や文化が、時間をかけて地域と共有され、今では世代を超えて広く根づいている。プロモーターの手を離れて、単純なイベント開催から、土地の文化を創造することに方向が変わったことが、四半世紀以上にわたって続く理由と言える。
2014年、初めてこのイベントを訪ねたことが縁で、2015年から「スキヤキ・オキナワ」をスタートした。富山にやってくる海外のバンドを毎年1~2組沖縄に招く。始めた理由は、沖縄には唯一無二の音楽文化があり、新たな挑戦ができると考えたことと、同じ頃、沖縄の音楽を海外に紹介する動きをスタートさせたことも大きかった。

海外の音楽見本市などに出かけて、サンプル盤や資料を手に沖縄のアーティストを売り込むのだが、逆にこちらが売り込みを受ける場面も多い。そこで感じたのは、沖縄の音楽を海外に伝えるということは、同時に海外の音楽を沖縄で受け入れる必要があるということ。一方的に売り込むだけではなく、良い音楽を受け入れられる土壌を作る。双方向でコミュニケーションができる環境を整えることが重要と考えたのだ。

「スキヤキ・オキナワ」を始めて今年で4回目になるが、動員の面では毎回しびれるような苦戦を強いられる。「ポーランドでワールドミュージックの支持率はマーケット全体の4%だけで、観客は決してワールドミュージックのファンじゃない」。中国で会ったポーランドのワールドミュージック・フェスティバル「GLOBALTICA」のPiotr Pucylo(アーティスティック・ディレクター)は、そう話した。「地域の課題や困難をプログラムの一部に組み込んで、地域の伝統もプロモートする。常に、観客の興味をクリエイトする努力をする。それと高いアーティスティック・レベルを保つこと。また、よその文化を理解することで、自分たちの文化の大切さを再認識することができる」とも。

「 スキヤキ~」や「GLOBALTICA」のやり方を見ると、宣伝・プロモーションで広げるより、考え方を植え付けて、オーディエンスを時間をかけて育てることが大切だと感じる。沖縄にはすでに豊穣な音楽的土壌があり、「スキヤキ・オキナワ」では、海外と沖縄のアーティストのコラボレーションの場面も作ってきた。

BKOカンテット(マリ)× THE SAKISHIMA meeting、ヌーラ・ミント・セイマリ(モーリタニア)× 大工哲弘 with マルチーズロック、 3 people music(台湾)× HIRARA。
ルーツの異なる音楽が出会い、舞台上で新たな到達点に立つという場面は、いつも新たな感動を呼び覚ます。様々な土地のエッセンスを融合し、知恵を絞りつつ音楽や文化の個性を磨いてきた沖縄の”チャンプルー” スピリット。その精神は今も変わらない。
私自身、沖縄音楽を通した新たな試みはまだ始まったばかり。ステージ上での小さな奇跡の連なりは、少しずつ人々の心に響いて、多くの人々の新たな想像力、表現の源泉になるものと確信している。

o1

BKOカンテット(マリ)× THE SAKISHIMA meeting 2015年8月19日@桜坂劇場

o3

ヌーラ・ミント・セイマリ(モーリタニア)× 大工哲弘with マルチーズロック 2017年9月2日@桜坂劇場

o4

3 people music( 台湾) × HIRARA 2018年9月2日@桜坂劇場

o2

桜坂劇場
〒900-0013 沖縄県那覇市牧志3-6-10 TEL 098-860-9555
桜坂劇場は、国際通りの中心「てんぶす那覇」から徒歩3分。
牧志公設市場も近い。「dictionary」のバックナンバーフェアは
街フェス「Sakurazaka ASYLUM]に合わせて開催された。


rp

野田隆司/Ryuji Noda

株式会社クランク 取締役・プロデューサー。那覇市の中心にある文化拠点・桜坂劇場を運営。町中の音楽フェス「Sakurazaka ASYLUM」や音楽レーベル「Music fromOkinawa」をプロデュース。沖縄音楽を海外に発信し、アジアとの音楽ネットワークの構築を進める。

次の書き手は、宗像堂の宗像誉支夫さんです。


PEOPLE :

フリーペーパー・ディクショナリー
サポーター&配布ネットワーク募集