ヴィンセント博士の ロマンティック物理学

これはいわゆるアインシュタイン以降の物理学ではない。というかそんなハイレベルな知識は必要ない。僕らはこの世界を五感によって認識あるいは観測していて、特に目に見えるものばかりを前提とした社会で、今日もウダウダ生きている。しかし、この世界や宇宙には目に見えないもののほうが圧倒的に多いのだ。重力だって、音楽だって、感情だってそうだろ?偉い学者の理論や数式はわからなくてもいい。ただ「目には見えないかそけきものたちが、確かに在る」という視点で、この現実を甘美に観測すること。-それが、「ロマンティック物理学」である。

第2回 THEORY OF RELATIVITY.

修学旅行の夜に誰かが言い出す「…クラスに好きなコとかいる?」くらいのノリで聞きたいのだが、みんな…相対性理論って知ってる?言葉だけなら知っている人は多いと思う。あの天才アインシュタインが確立した理論。相対性理論には「特殊相対性理論」と「一般相対性理論」というのがあって…と、この時点でもう大体の人は興味が尽きる。合コンで話そうもんなら二度と呼ばれなくなるだろう(実話)。

それでも、僕は量子力学と並んで相対性理論が大好きだ。もちろん、ちゃんと理解しているわけではないが、難解さゆえの手が届きそうで届かないような存在感が好きでたまらない。正直にいうと、たまに相対性理論のことをイヤらしい目で見たりもしている。

他の女(学問)とはすぐにワンナイトラブできる僕も、相対性理論のことは口説けないでいる。たまに彼女もそのドレスの向こう側をチラっと見せてくる事があるのだが、こっちがその気になったとたん、闇夜に消えるのだ。捉えようの無いミステリアスガール。アインシュタインしか抱けなかった女。そんな相対性理論は量子論と並んで、現代物理学の基本でもあるし、何より僕らのいる宇宙、ひいてはニングンそのものの存在を捉えるのに極めて重要な理論なんだ。それなのに、多くの人は相対性理論について理解どころか興味すら無い。事実、かなり難しい。

…ということで、今回から数回にわたって、この難解すぎる相対性理論を噛み砕いてみたいと思う。
※あくまでロマンティック物理学的な解釈です。本物の物理学ではないのであしからず。

全ては光からはじまった。

この世で一番速いもの…もちろん光だ。まずはその光の話をしなくてはならない。(なんてロマンティックな始まりだろうか…!)光の速度はおよそ秒速30万kmで、この宇宙で最も速く、1秒間に地球を7週半できるくらいの速さだ。中学生が草むらでエロ本を見つける速さより、不倫カップルが人目を避けて安いホテルに入るときのスピードより何万倍も速いのだ。今のところ、光の速度より速いものは存在しない。僕らはその光がないと何も視る事ができない。光あっての視覚、黒田あってのカープだ。

ここで一つ夜空の星を思い出して欲しい。夜空で光って視えている星の光は、君にとってぱ今”の光でも、星にとっては何万光年前の“過去”の光だということ。その星から何万光年も前に放たれた光が、今の君の目に届いて触れている状態だということ。そう、僕らは何億年前の過去を“今”この瞬間に、“同時に”視る事ができるんだ。星空を眺めたときのロマンティックな気分の本質はそこにある。

例えるなら、昭和から平成までのあらゆる世代のスターで集められた学園ドラマを観ているようなものだ。山口百恵と広瀬すずが同じ学年の高校生役として出演するドラマ…まさに世代を超えて高視聴率間違い無いだろう。話を戻すが、「光とはなんなのか?」という問いこそが相対性理論などの現代物理学のはじまりだった。かつての多くの物理学者にとって、光は「波なのか?粒子なのか?」というのは大問題だったんだね。好きなあの子に男はいるか?ヤリ○ンか?で悩んでいる男子とは大違い。粒派のニュートンと、波派のホイヘンスの間では熾烈な論争があったらしい。

ニュートン「光は粒子だからまっすぐ進むの!だからモノにあたって影ができるんじゃん!」
ホイヘンス「はあ?光が粒子なら、なんで光同士が交差したときにぶつからないんだよ…」

とヘビメタみたいな髪型の二人はお互いの髪の毛を引っ張り合いながらケンカしていたに違いない。その後、時とともに色々な実験を経て光の正体のみならず、電磁波まで発見されたりする。

「なんか光自体が電磁波という波の一部みたいなんだよね…ってことで光の正体は波イッッ!!!」
と、ニュートンは破れたかのように思えた…。しかしその後、かの天才アインシュタインが登場し衝撃の発見。
「いや、波でもあるけど粒でもあるよ。どちらかではなく、両方の性質を持つものとしか言いようが無い。」

波のように振る舞う粒子、ではなく波でも粒子でもある…これは正直、我々ニンゲンの感覚でいうと矛盾しているので、理解しにくいだろう。どこか、女性が嘯く「好きだけど、つきあえないの」とか「愛してるから…サヨナラ…」の理不尽さに似ている。わけがわからん!他に男がいるのか!?と、怒りたくもなるかもしれないが、光子は名前の通り、極めて難解で女性的なのだ。みなさんの周囲にも、そういう光の二重性のような女性が、少なからずいるのではないだろうか?キラキラ輝いて視え、ときに清純な匂いがしたかと思えば、夜はめっぽうすごいらしいという噂を耳にしたり…。そういう女に限ってこれがまたいい女だったりする。困ったもんだ。

絶対美人なんていない。

今、君に彼女がいたとする(女性は彼氏でもいい)。おそらく、君はその可視光線の光で視える彼女のことを“絶対に可愛い”とか絶対に美人”だと思ってはいないだろうか?だが残念なことに、君の彼女のことを“可愛い”と思っているのは、おそらく君と彼女の両親だけだ。世の中の多くの人は「視る人によっては可愛い」くらいのもんだろう。「まあまあ可愛い」とか「スタイルは割といい」とかね。

恋というブラックホールに囚われてしまった君は、光を失っているので彼女の真の姿が視えていない。しかし、どう贔屓目に視ても…君の彼女が千年に一人のアイドル橋本環奈より可愛いわけがない。しかし、地球は広い。あの橋本環奈ですら可愛いと思わないニンゲンもいるだろう。だがその意見を否定してはいけない。そう、絶対的に誰が視ても可愛いものは存在しない。全ては相対的なのだ。だが、彼女のことを「好きだ」と思う気持ちだけは絶対的で、唯一のものだ。大事にしろよ…。

kanna

光子(ミツコ)は誰が視ても常に可愛い。

そんなふうに、君の彼女(ちょいブス)は、君と彼女の両親からは可愛いく視えて、赤の他人からはちょいブスに視えるという現象は、恋愛特有の感情が発生させる特殊な重力が関係しているかもしれないので、次回以降の一般相対性理論のほうで考察してみたいと思う。

今回は特殊相対性理論でまず前提となる「光速度不変の原理」を説明しておきたい。簡単に言うと、「誰がどんな場所で視ても光の速度は変わらない」ということだ。

漫画のパドルシーンによくあるパターンで、
敵「フハハハッ!!!わたしのスピードについてこれるかな?」
主人公「ッ…!攻撃が視えない!」
などの描写があるが、修行して同じレベルのスピードで動けば視えたりするように、何かの速度というのは観測者のスピードによって相対的のはず。電車に乗っているときにすれ違う対向電車が速く視えたりとかね。ところが、光だけはどんな状況で視ても秒速30万km動いて視えるという結論。椅子に座って視ても、超高速ロケットに乗って視ても、常に秒速30万km。さっきの話に言い換えると「ミツコは誰がどう視ても絶対的に美人」ということだ。そんなまさか。

時間は相対的に変化する。

光の速度は、誰がどう視ても常に一定!…だとするなら、一体この宇宙では何かどうなっちゃうの!?っていうのを考えまくったのが相対性理論だ。かなり端折っているが、この「光速度不変の定理」から“物体のスピードが光速に近ければ近いほど、時間は遅れ、空間は曲がり、質量とエネルギーが増える…”という結論が導かれる。これの意味するところは…“時間は観測者によって相対的に変化する”ということ。これこそが相対性理論のメインテーマのひとつ。

これは、僕らの日常でも味わえる感覚だろう。ニングンはおもしろい体験をしていたり、集中しているときは時間が速く進んでいると感じ、つまらない時間は異様に長く感じるだろう?結果、ついついうっかり遅刻だってしてしまうのだ。むしろ遅刻というよりタイムトラベルといっていいだろう。みんなも「なんで遅刻したの?」と聞かれたら「僕が遅れたんじゃなくて時間のほうが遅れたんですね…つまり相対性理論です!」と答えよう。(茂一さん、この原稿が遅れたのも、相対性理論です…。ごめんなさい。)

時間を超える瞬間。

僕らの身体はどうしたってこの世の物理作用から逃れられない。重力があるから自力では空も飛べない。質量を持っているために速く動こうとすればするほど身体は重くなる(これも特殊相対性理論)。でも、頭の中で発生させたイメージなら、今すぐ木星にだって飛べる。それこそ、もしかしたら光速で。視えている世界を捉えているのは視覚だが、その世界を体験しているのは僕らの意識だ。つまり、脳内の神経細胞だ。脳の電気信号の伝達速度は、現時点でわかっているもので、速いものでも秒速120 m程度らしい。残念ながら、光速には全然届かないようだ。とはいえ、物理学同様、脳科学もまだまだ未知の分野が多い。想像してみよう。
何か創造的なものをイメージする時や、非日常的な興奮状態に陥る時…。
僕らの脳内で発生するであろう、ある種の電気信号のスピードは、実は光速に追いついているのではないだろうか?

たとえば…素晴らしい音楽に出会った瞬間。ふいにアイデアを思いついた瞬間。グラスを床に落とす瞬間。異性に惚れる瞬間。宝くじに当たった瞬間。ドラクエのセーブデータが消える瞬間。年下に急にタメ囗をきかれた瞬間。不倫がバレた瞬間。「生理が来ないの…」と言われた瞬間…など。人によって様々なフランティックな瞬間があるだろう。そのとき人の精神は、限りなく光速に近いスピードでふるまい、時間を超越しているのではないだろうか…?僕らは常に、相対性理論という舟に乗りながら、興奮や感動というエネルギーによって、少しずつ未来にタイムワープしているのかもしれない。

…もしそうだとしたら、ロマンティックだね!!

ということで今回は光の話と、「特殊相対性理論」のごく一部をかいつまんでみた。次回は「一般相対性理論」について触れてみたいと思うが、正直難解すぎるので、ドキドキしている。(ヴィンセント)

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フリーダム・ディクショナリー
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