SEALDsインタビュー

2015年9月10日木曜日 午後2時原宿カフェREFECTOIRE メンバー:今村幸子 / 牛田悦正 / 神宮司博基 インタビュー構成・写真:桑原茂→ ページデザイン:池上祐樹

神宮司 そうなんですよね、でも中で活動をしてる人たちは、高校生が声を上げるということに対して、高校生は勉強が本分だから、デモは大学に入ってからやりなさいという様な批判が強くあるみたいで、やっぱり大変そうなんです。でも、彼らがなぜ動いているかと聞かれた時には、本当にしっかりと「高校生だからとか、関係無いです。高校生だからやってるわけじゃなくて、今この国に生きる一人の市民としてやっているんです」と答えていて、これはかっこよすぎるなと思って。

桑原 かっこよすぎだよ、それ。

牛田 高校生がそんなこと言うのかと思って。「私たちは高校生であることを特別だと思いません」って言っていて。

神宮司 だから高校生だから、とかは彼らにとっては別に関係ないんですよね。そして、きっとそういう姿を見た誰かが、もしかしたら「こういうことをやっている人たちがいるんだ、こういうことが可能なんだ」って思うかもしれない。もしかしたらそこから何か始めるかもしれない。何かそれまで考えていなかったことを考え始めたり、あるいは何か本とかを読み始めたりするかもしれない。それこそが一番凄いことなんじゃないかなって。カルチャーって本当はこういうことなのかなって思うんですよね。

牛田 現にEDMしか聞いてなかった高校生の代表格みたいなやつが、僕のところに来て、ヒップホップ教えてくださいって来て。

桑原 最高だね。(笑)

牛田 だからヒップホップもそうだけどネオソウルも聞きなよって教えまくるという(笑)最高ですよね。すごくいいなと思って。

神宮司 そういう文化の存在というものは本当に大きくて、僕にとっては図書館の存在って大きかった。僕は中高の時代、部活が忙しくて、木曜日しか休みがなかったんですけど、その日、学校帰りに高校の近くの図書館に行って、そこにある本を読むとか、CDをめっちゃ聴きまくるっていうのが本当にすごく好きだったんです。その図書館がちょっと普通じゃなくて、茗荷谷にある小石川図書館っていうんですけど、ありとあらゆるcdがあったんですよ、公立図書館なのに謎の現代音楽とかノイズのコレクションがすごくて、メルツバウとかがめっちゃ揃っているんですよ(笑)。ワールド・ミュージックも一杯あって、そこですごく感動したのが、マリの音楽を集めたcdがあって、Fanta Dambaっていう歌手とか、それを聞いて、何語かもわけわからないんだけど、なんだこの美しい旋律!ってなって、コラっていう楽器なんですけど…

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桑原 マリの音楽、コレクションにあると思います。

神宮司 それで音楽を聴くことで、こういうところ行ってみたいなとか、ヒップホップとかを聞いてもそうですけど、この人たちって何言ってるんだろう?とか外の文化を考えるきっかけに絶対なったんですよね。それは今の自分をつくってると、本当に思います。

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桑原 なるほど。実際の集会の場所では、音楽そのものをかけることはあんまりしていないの?

牛田 今は普通のデモではしていないんですよ。サウンドデモっていって、こういうところ(渋谷)で、音楽をかけて歩いてたりする形のデモの時には音楽をかけたりしてます。
(話題飛ぶ)

牛田 僕の話じゃなくて、sealds全体の話してもいいですか

桑原 もちろんです

牛田 僕は僕自身の話をしたいんですけど(笑)

桑原 SEALDsは一人一人がみんな違うんだっていう話は聞いていたから、大丈夫ですよ。

神宮司 そうですね、SEALDsは統一されているというよりは、それぞれの個人がたまたま集まっているというイメージです

桑原 でもSEALDsのメンバーとして、統一した何かというのは持っている?

牛田 えっと、一応SEALDsとしてのステートメントが、ホームページに乗っていて、そこでは超簡単なことしか言ってないんですよ、SEALDsとしては自由で民主的な社会を求めます、と。ただそれだけで、そのために三つ条件があって。一つは「立憲主義」、憲法を守りましょうっていう当たり前のこと。次は「生活保障」って言って、社会保障と言い方を変えてるんですけど、最低限の再分配をする、最低限の生活が認められる社会を求めるということ。それから、対話に基づく平和外交、つまり「安全保障」をちゃんとやってくださいっていう当たり前のことです。だから誰でも乗っかれるっていう。

神宮司 個々のいろいろな考えはもちろん違ったりするんですけど、「憲法を守れ」とか、「戦争反対」とか、当たり前のレベルでは合意がある、そこは共通して運動しているという感じです。そして今動いている状況は、緊急の行動、つまり本当にStudents Emergency Action for Liberal Democracy、「自由と民主主義を守るための緊急学生行動」なんだと思います。とりあえず今は緊急だから、皆いろいろな意見はあるけど、この状況ではUniteしないとまずいでしょっていうことなんだと思っています。

牛田 例えばメンバー間でも対立はあって。9条の解釈も違いますし、僕はちょっと9条変えてもいいんじゃないのって思っていますけど、9条絶対変えちゃダメだよねっていう人もいますし。そこは本当に様々で。でも現時点で9条変えることはありえないですし、今のこの状況を見たら反安倍で統一すべきだよねという感じになっていて。
今後のSEALDsの大きい動きとして考えているのは、もともとSEALDsってリベラル勢力があまりにも弱くなってしまって、右傾化が進み過ぎてしまったということで出来たんです。だからリベラル勢力をもう一度、結集させるということ。そしてもう一点は、改憲阻止です。安倍政権が2012年の時点で出していた改憲草案、あれが旧ソビエトとか、今の中国とかの憲法に近いくらいのひどい憲法で、このままだと普通の国じゃなくなっちゃうっていうところがあって。だから本当は来年2016年の参議院選挙に向けて行動しようと思ってたんですよ。それで緩くやろうと思っていて。例えば僕らはサロンっていうイベントをやっているんですけど、それこそフランスみたいに、今学者の人とアーティストが簡単につながれるようなそういう場所がないよねということで考えていた。SEALDsはアーティストの人たちとも繋がっているし、学者の人たちとも繋がれているから、それをまた繋いでいく場を作ることで、そこでまた別の化学反応が起こると思うんです。とりあえずは、そういう活動をやっていこうという話をしてたんですけど、今、安保法制が出てきちゃったので緩くやる感じでもなくて。だから、安保法制を止めることの後には、次の参院選に向けて、改憲の阻止を目指すという感じです。

神宮司 (8月)16日、17日か18日の辺りで、60日ルールを使って強行採決するって言われてますけど、もしされたとして、そこで終わる気は全然無いです。むしろ、そこで危機を感じる人たちが増えると思うんですよ、だからその人たちが、じゃあ何をしていったらいいのかというのを可視化できるように、これから動けたらいいなと思っています。これから何が起こるのかということは、必ずしもクリアにわかるわけではない、でも安保法制や改憲を止めるためには何をしたらいいのかということを、ステートメントでもなんでもいいんですけど、わかりやすく出していくために、次の参院選に向けて、頑張っていくというか。ただ、本当は音楽聞いて、本を読んで、面白おかしく暮らしていたいだけなんですけど。でもそれをするためには、今ちょっとやっとかないとなというか。
ここで大学三年の今村幸子さん登場。

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今村 大学三年の今村幸子です。私もよくこの安保が採決になった後は、どうするの?というふうに聞かれるんですけど、これからも、牛君とか神宮司君が言ったみたいに、参院選に向けて続けていくというのを見据えています。私はSEALDsで出版班に所属しているんですが、さっき神宮司君が、誰かが行動をしようとする時のために可視化する、と言っていたように、もしこれから運動をやりたいっていう人がいた時のために、一つわかりやすい形として、本という形でSEALDSがどういう流れで、SASPLから動いていって、どういう思いで、どういう形で動いてきたかということを纏めた本を作ろうと思っています。それは10月、11月くらいに出る予定です。
「民主主義は止まらない」って、昨日テレビでメンバーの一人が言ってたんですけど、この安保法案の動きの中で、政治に興味が出てくる人も出てきたと思うんですけど、きっとまだまだ全然ニュースを見ていない、この安保法制についても気づいていない、っていう人もいると思うので、そういう人たちが少しでも減るといいなと思っています。
 政治って自分たちと全然関係ないことのように思えるけど、全部生活に根ざしていて。友達と楽しく過ごして、いい音楽聞いて、お買い物をして楽しいっていう日常を過ごすこととか、単位のこととか就職の心配するのと同じくらいに当たり前の前提、生活の土台として心配しないといけないことなので、そういうことを考えることが当たり前になればいいと思っています。そうしていくことで、この国家の民主主義レベルが上がればいいなと思っています。

牛田 まずそもそも学者が、僕はなんで声をあげないんだと思ってたんですよ。もっと上げていいのになと思っていて、僕らが声をあげるようになったら、「いや我々が守らねば」みたいな感じで、後から学者が出て来て、何が守らねばだよって(笑)
 Twitterで誰かが、学者もSEALDsに扇動されて、煽られて出てきたんだって言ったら、学者が「いやそんなことはない、煽られて出てきたわけじゃない」って、お前煽られて出てきたんだろと(笑)

今村 OLDs、MIDDLEsっていうご年配の人々や中年の方々も集まった団体が出てきたんですけど、OLDsの人たちは素直で。(笑)

桑原 OLDsっていうのは?

今村 Otosiyori for Liberal Democracyっていうんですけど(笑)その人たちは私たちもSEALDsに尻を蹴られて出てきましたって言ってくれて、嬉しかったんです。

桑原 それは世代的にはどれくらいの人たち?

牛田 60歳以上で、しかも毎週土曜日に、巣鴨でデモするっていう(笑)

今村 水筒を持って、お話し合いしているみたいです。

桑原 女性が多いんでしょうね、きっと。


フリーダム・ディクショナリー
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