SHIPS MAG -MAKI NOMIYA×MOICHI KUWAHARA-

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桑原 :野宮さんは、自分の思いが完成するところまで来れた理由は、どこにあったと思いますか。

野宮 ひとつは諦めずに続けてきたということ。‘80 年代には、親や友達から「いい加減、気が 済んだんじゃない?」とか言われていましたから。でも「絶対このままでは終わらない!」と 続けて。ある程度かたちになるまで、10年くらいかかりましたけど( 笑)。私は曲を書かないので、歌とヴィジュアルしかない。つまり、歌手として演じるタイプなので、うまくフィットする強力なプロデューサーに出逢えたら、自分を100% 発揮できる自信があったんだと思う。それが小西さんだったんですね。

桑原映画とか音楽とか、活動を続けていくなかで何か具体的な支えになったことはありますか。

野宮 私にとってのスーパースターというのは、亡くなったデヴィッド・ボウイみたいな人。ヴィジュアルと音楽が一緒になって、ファンタジーの世界を作りだしている。そういう世界観が好きで、自分もシンガーとしてそういうものを提供したいとずっと思っていました。

桑原 野宮さんはこれからの日本の音楽シーンをどう見られていますか。

野宮 新しい音楽をそれほど聞いているわけではないですが、若くて才能のある子たちがどんどん 出てきていますよね。みんなよく音楽を聴いているし知っていますからね。すごくレベルは上がっていると思います。

桑原 昨年、アルファ・レコードの歴史を振り返るイベント( アルファ・ミュージック・ライブ) で、ご一緒させていただきました。野宮さんは、プレゼンターをされていて。あんな風に日本の音楽業界を俯瞰して見る経験をすると、改めて日本の音楽シーンもすごいと思いますよね。

野宮 すごいですよね。私たちの世代は海外への憧れが大きかったですけど、今の若い子は洋楽よりも国内の音楽を聴いてミュージシャンを目指したりしている人も多い。今回、自分自身が改めてアルファ・ミュージックのアーティストからも多大な影響を受けていたことを確信しました。『野宮真貴、渋谷系を歌う。』は渋谷系スタンダード化計画でもあって。渋谷系から20 年経って、そろそろスタンダード・ナンバーとして歌ってもいいのではないかと思いまして。“ 渋谷系”というのは実は音楽にジャンルではないのですが、共通点としては過去の名曲をすごくリスペクトしていて、それを自分たちなりに表現していたと思うんです。私はシンガーとして、それらのルーツも含めて、歌い継ないでいくのが、ひとつの使命かなと思っています。

桑原 最新アルバム『世界は愛を求めてる。』では、小西さんが日本語の訳詞
をされていて、時代とうまく距離を保ちながら、「ラブ& ピース」な曲を歌われていますよね。最近は日本もなにかと危険なムードになっている。そういう空気感はエンターテイメントにも必ず影響を与えると思うんです。野宮さんはどう感じられていますか?

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野宮 そういう意味もあって、バート・バカラックの曲は絶対に入れたかった
んです。様々な名曲がありますけど、『What The World Needs Now Is Love』を選んだのは、スウィング・アウト・シスターのコリーンとデュエットしたくて、彼女もこの曲が大好きで。いまの時代のメッセージになると思ったので、アルバムのタイトルにもしました。小西さんの訳詞は昔から素晴らしくて、難しい言葉を使うことなく深みが感じられる表現ができる人なんですよね。私は歌うことでしか表現できませんが、自分の役割として「すごくメッセージを伝えるというより、聴いてくれた人が何かを感じ取ってくれたらいいな」と思いながら歌っています。

桑原 あの訳詞が見事だなと思ったのは、小西さんは直接的に戦争反対とかいうのは好きじゃない人だと思うんです。だけど、そういう気持ちがあることを、ちゃんと伝える人だなって。よく聴くと相当ブラックですよ。そんなことは関係ないように歌っている野宮さんもすごいと思いましたけど。

野宮 それが私のヴォーカルスタイルの特徴のひとつなんです。哀しい失恋の歌でも、あまり感情移入し過ぎずにさらっと歌うということで、逆にせつなさがこみ上げるということもあるのかもしれません。もちろん、受け取る側の感じ方ですけれど。

桑原 カッコよくないと伝わらないですよ、すべてのことは。そのレベルが時代とともに上がってきているというか。今回の信藤三雄さん(アート・ディレクター)のアプローチも、これまでの活動を踏まえたうえで、いまの野宮さんの位置と時代みたいなものを的確に捕らえていて。かっこいいなと思いましたね。

野宮 いつでも、「いまの自分が一番いい」って言いたいですよね。

桑原 そこが素晴らしい。

野宮 カッコいいことをずっとしていきていたいと思いますし、大人としての品格も必要ですし、それからユーモアも大事ですね。

桑原 他の国にはない、東京のモダンなものを野宮さんは代表されていると思いますよ。

野宮 ほんとですか? すごくうれしいです。

桑原 これまでは消費社会の戦略的な側面もあって、若い人たちを消費のピークにしてきたと思うんです。でも「年齢を重ねるほど人は魅力的になるんだ」ってことを、ヨーロッパの社会のように考えられる時代になってきたのかなって。その代表としても、野宮さんの存在はすごく大事だなって思いますね。

野宮 うれしいです。頑張ります。本当にそうありたいと思いますし、かっこいい大人のお手本になりたいですね。そういえば、先ほどもお話しに出たアルファミュージックライブで、雪村いずみさんとユーミンとコシ・ミハルちゃんの私服が、3 人ともミニスカートに網タイツだったというのに衝撃を受けたんです。私もピチカート時代はミニスカートがトレードマークでしたけど、50 代になってからは封印していたんです。というのも、頭の中の自分像と、鏡に映っている自分とのギャップがありまして(笑)。でも、あのときに 50 代、60 代、70 代、それぞれのミニスカートのスタイルが三人三様ですごく素敵だった。そういった憧れのお手本があることがとても大事ですね。私も大いに刺激を受けて、いまの自分に似合うミニスカートの着こなしを研究してみたくなりました。

桑原 大人のミニスカートっていいコピーですね。素敵なフレーズが出たところで、そろそろお時間になりました。今日は本当にありがとうございました。

インタビューの全文はSHIPSMAG で。
http://www.shipsmag.jp/2016spring/article/227


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野宮 真貴(MAKI NOMIYA)

元「ピチカート・ファイヴ」ヴォーカリストとして「渋谷系」ムーブメントの音楽・ファッションアイコンとなる。現在、音楽活動に加え、植物療法士としてヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍中。 ◆オリコン・ウィークリー・アルバムランキング、ジャズ部門1位(2015 年11 月23 日付)ニュー・アルバム「世界は愛を求めてる。~野宮真貴、渋谷系を歌う。」好評発売中。◆全国コスメキッチン リップ部門2015 年間売上1 位。野宮真貴プロデュースのMiMC オーガックコスメ「サプリルージュ」発売中。
more info : http://www.missmakinomiya.com


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