アート ブックの出会いかた

私たちがこれまでに出会った、自分にとって無くてはならないアートブックを紹介します。
アートブックは、装丁やレイアウト、紙質やインクにいたるまで、アーティストの描く世界観を指先から感じとるためのこだわりがつまっています。思わず触ってみたくなる、どうしても自分の本棚に置きたくなる、そんな一冊を本屋さんで見つけてみてください。

先日、世界的に知られる大規模な写真のイベントPARI SPHOTO をメインに、ロンドン、パリ、アントワープへ出張で行きました。
それぞれの国で主にアート本を扱っている書店や美術館併設の書店を巡り、どのような本がどのように並べられているのかも調査してきました。

ロンドンでは意外と当店と同じようなラインナップで、ほとんど入ってきている本が多かったのです。なんとなくですが、島国なのもあって、ちょっとどこかカルチャーが日本と似ているのかなと感じました。並べ方も似ているところが多かったです。
パリは、見たことの無い本がたくさんあって、とても新鮮でした。PARISPHOTO と同じ期間に、OFFPRINT、PHOTOFIVER、Polycopies と3つも主に写真に纏わるブックフェアを開催していて、たくさんの本を見る機会がありました。
ヨーロッパの出版社の方と話すと、輸送コストのことを考えるとわざわざ日本の書店に置くことをあまり考えていないようでした。美術館で独自に出している図録などもあったので、ヨーロッパの書籍はきっとまだまだ一部しか日本に入って来ていないのだなと痛感しました。

アントワープは、普通の書店でもファッション系の雑誌がメインで多くラインナップされており、さすがはファッションの街だなと思いました。ベルギーでもきっとパリと同じ理由で、まだまだ知らない雑誌や本がいっぱいあると思います。
パリもアントワープも、並べ方が少し変わっていて、粋でした。
今後、影響されて並べていくと思うので、当店の棚を見に来てください。

これだけ洋書を普段扱っていますが、世界には知らないアート本がたくさんあって、そこにしかないものを、自分たちのお店に持ってきて、お客様にお届けするのが私達の使命なので、どこでも手に入るものと、ここにしかないものをうまく編集していくことの大切さを改めて考えた出張でした。
世界にある素敵なアート本をたくさんたくさんお客様に届けていき、日本にいながらも本だけは、ここにくれば揃う!と思っていただけるようにしていきたいと思います。

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パリの本屋で買った個人の日記帳をそのまま本にした本

江川賀奈予 代官山 蔦屋書店 アートコンシェルジュ
都内大型書店を経て、代官山 蔦屋書店のコンシェルジュとしてアート・ファッション分野を担当。さまざまな企画・展示に携わる。ここにしかないものを探して、日々の仕入れに努めている。

透明のシートが用いられた表紙、異なるサイズの紙を組み合わせたページ構成、そしてボルトを使った製本。一目見て、本とは思えない要素の数々に驚かされます。澤田育久の写真集『Substance』には、駅の地下道などに典型的な壁面や天井、タイルの目地といった無機質なパターンがリズミカルに収められています。静的なモチーフでありながら、動的な視覚の楽しみを見出すことができ、まさにこの写真のためだけにデザインされた一冊になっています。
この本を手がけたのはインディペンデントな出版活動を展開するRONDADE。ディクショナリー #181 で紹介した、無印良品のバインダーを使った冨井大裕『関係するInteract』もここの出版物です。本という「形式」を出発点にせず、収録される作品から必然性のある形態を探っていくというやり方で、プロダクトとしての「本」を複数世に送り出しています。
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澤田育久『substance』
(¥6,200+ 税RONDADE)

このような本を欧米に持っていくと、(西欧的な)「本」という概念からの逸脱ぶりにいつも驚かれるそうです。それ
と同時に、欧米には日本のアートブックに関するまとまった情報や資料があまりないことを感じたといいます。そのことをきっかけのひとつとして、出版レーベルedition.nord をベースに活動するデザイナーの秋山伸氏を中心に「CONTEMPORARY〔ART BOOK〕review / archive」というプロジェクトが今年立ち上げられました。日本で出版されるアートブックの中から「本の伝統的な形態にとらわれることなく、存在全体が内容に深く関係づけられた本」を継続的に収集(archive)し展示(review)していこうとする試みです。代官山 蔦屋書店でもこの秋、「#002」という形で展示企画の第二弾を開催しました。
そしてこの取り組みは、欧米に向けて、日本(さらにはアジア)の本の情報を発信する中継地としての機能も目指されています。国内外の人たちの本をめぐる驚きをともなった交流によって、よりおもしろい本の出版や、本を取り巻く文化に多様性が育まれることを期待させてくれます。
さらに展示するだけではなく、できるだけそれらの本を買えるようにするというのもこの取り組みの特徴のひとつです。本の文化は、作る人だけでなくそれを買う人がいてこそ健全な循環が保たれるのだと思います。それは私たち書店の役割にも通じています。本の価値を様々な視点で可視化して、本に向き合う姿勢をひとりひとり見つけてもらうこと。そして自分がこれだと思った本を買ってもらうこと。本を自分のものとして楽しんでくれる人たちによって、本の未来はつくられていきます。
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「CONTEMPORARY〔ART BOOK〕review #002」の展示風景

渡辺淳 代官山 蔦屋書店 アートコンシェルジュ
美学・美術史、服飾などを学んだ後、大型美術館のミュージアムショップで書籍の選定、調達を担当。2014 年2 月より代官山 蔦屋書店に勤務。アートに関わるあらゆる分野を関心領域としながら、コンシェルジュ業務に取り組んでいる

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