とある桑原 茂→の Paper Show
photo moichi kuwahara
Paper Show 展覧会感想記
前号では、二人の作家にインタビューし、その生い立ちに、作品作りへの動機とそのルーツを求めた。そもそも、目の付け所がクレイジーだ。 ドイツ・ベルリンの街中の壁から剥がし収集した総重量150kgにおよぶポスターを素材に、手作業を駆使したコラージュ、インスタレーションを発表するとは、一体、どういうものか?その名も「Paper Show」。
今更いうまでもないが、アートと音楽の垣根はそこには見当たらず。例を挙げるなら、DJがあらゆる楽曲からcutup&samplingを際限なく、してこまし、これまで聞いたこともない楽曲を吐き出すように、Paper Showの二人は、時代に忘れ去られ置き去りにされたポスターをまるで宝の山に出<わしたかのように、目をみはる作品へと蘇生させていく。 ENZO曰く、これも自分達なりの彫刻作品かも、と。まさに彼らが時代をどう生きて来たかをあからさまに感じさせてくれる。
そういえば、ENZOからこんな話を聞いた。展覧会の空間に惹かれた写真家が、この空間で写真を撮りたいと言い、いきなりその真空パックを破り剥がし、詰め込まれてあったポスターを会場中にばらまき撮影し始めたそうだ。もちろん、その後にENZOが作品を創りなおしたそうだが、展示作品そのものを解体することすらいとわない二人の自由な精神に驚くと共に、その精神こそが、この展覧会の本質であるように感じた。
Paper Show Photo Gallery
永戸鉄也 Tetsuya nagato
アートディレクター、アーティスト
1970年東京都生まれ。高校卒業後に渡米。帰国後、96年よりアートディレクターとしてUAやRADWIMPSをはじめとする国内トップアーティストのCDジャケットデザインやミュージックビデオのディレクション、広告やドキュメンタリー映像制作等に携わる。ファッションブランドではUNDER COVERのアニバーサリーブック、KIJIMA TAKAYUKI のルックブックのアートディレクションも手掛ける。一方、アーティストとしても活躍し、コラージュ、写真、映像作品を制作、個展やグループ展で発表を続けている。 2003年、第6回文化庁メディア芸術祭デジタルアート優秀賞受賞。 トーキョーワンダーウォール公募2003 ・ワンダーウォール賞受賞。
ENZO
1972年生まれ。 R.mond inc. 主宰。PVやCMなどのムービー撮影、雑誌や広告等のスチール撮影、店舗デザイン、展覧会などのオブジェ製作などあらゆるメディアにおける美術制作を手掛ける。 2013年夏、104GALERIEをオープン。国内外問わず、独自の審美眼によって精選した作家の展覧会を行っている。