アート ブックの出会いかた

私たちがこれまでに出会った、自分にとって無くてはならないアートブックを紹介します。
アートブックは、装丁やレイアウト、紙質やインクにいたるまで、アーティストの描く世界観を指先から感じとるためのこだわりがつまっています。思わず触ってみたくなる、どうしても自分の本棚に置きたくなる、そんな一冊を本屋さんで見つけてみてください。

刊行された書籍は瞬く間に完売となるなど、そのセレクトとクオリティが世界のファッション・カルチャーシーンから絶大な支持を得ているロンドンの出版社IDEAを今回は紹介しようと思います。これまでに、アリ・マルコポロスによるGucciの写真集、ロシアの若手デザイナーGoshaRubchinskiy(コーシャ・ラブチンスキー)の写真集やファッションブランドvetements(ヴェトモン)のアートブック、NYのフォトグラファーCollier Schorr (コリエ・ショア)の写真集など気鋭アーティストたちの作品集を数多く手がけてきました。世界はもちろん日本でも、IDEAに選ばれた限定店舗のみの販売が許されています。(代官山蔦屋書店は販売しております。)

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クオリティの高いものを、限定部数で刊行するスタイルは、ファッションフリークの心情を実に突いてきます。今までルックというものはあくまで広告用でそれを写真集として顧客に配ることはあっても、販売するということがあまりなかったと思いますが、IDEAからのブランド写真集刊行以降、日本のブランドでも自費出版という形で様々なブランドが出し始めたように思います。日本のブランドからはUNDERCOVERが、唯一IDEAから刊行されています。IDEAは、アパレルも刊行と同時に発売することも多く、そちらも秀悦で大変人気です。

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最近では、ブランドやフォトグラファーの写真集だけではなく、キアヌ・リーブスのFANZINEを刊行、同時にキアヌの顔クッションや、PHOTO Tシャツも発売され、完売するほどの人気です。もはや、ファッションアイテムという視点のある写真集という、書籍としての新しい価値を提案してくれています。今後も刊行物が楽しみな出版社です。

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江川賀奈予 代官山 蔦屋書店 アートコンシェルジュ
都内大型書店を経て、代官山 蔦屋書店のコンシェルジュとしてアート・ファッション分野を担当。さまざまな企画・展示に携わる。ここにしかないものを探して、日々の仕入れに努めている。

コム・デ・ギャルソン、マルタン・マルジェラ、バレンシアガ、クリスチャン・ディオールなどなど、2017年から2018年にかけて、欧米を中心に老舗ファッションブランドの大規模な回顧展がいくつも開催されています。毎年2回のコレクションを主なサイクルとするファッションの世界ですが、こういった長年の活動をまとめた展覧会が開催されることは、ファッションブランドやデザイナーの本質を見定めるよい機会となります。そして展覧会につきものなのはカタログです。WEBメディア上で展示風景が比較的簡単に見れてしまう現在、カタログには単なる記録にとどまらない、会場では見せられなかった要素を収める役割が求められているといえるでしょう。その結果、作品集として魅力的なものがたくさん出てきています。

メトロポリタン美術館(NY)で開かれた『Rei Kawakubo / Comme des Garcons Art of the In-Between』では、会場に実物が多く展示される一方、カタログはファッション写真がまた別の迫力を持つ作品集になっています。ファッションの「写真表現」についても、極めてアーティスティックな視点でトップクラスの写真家たちとコラボレーションしてきた川久保。その野心的な挑戦がアーカイブされていて、カタログを含めて展覧会が完成するのだということを感じさせてくれました。表紙写真はパオロ・ロベルシによるもの。
参考価格:7,800円(税別)

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バレンシアガがブールデル美術館(パリ)で開催した『Balenciaga, l’œuvre au noir(バレンシアガ、黒の作品)』は、黒い服と白い彫刻が対比をなす力強い展示でした。その構成に合わせるようにカタログもモノクロを中心にまとめられ、良質な「黒」がとても印象に残ります。バレンシアガの代名詞でもある黒の豊かさが紙の上で緻密に表現されています。
参考価格:9,780円(税別)

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ガリエラ美術館(パリ)で開催中のマルタン・マルジェラの展覧会『Margiela / Galliera 1989-2009』のカタログも、この革新的デザイナーの美学がつまったものになっています。写真、エスキース、印刷物などがまるでインスタレーションのように一冊の中に配置され、展覧会とはまた違った見ごたえがあります。
参考価格:7,500(税別)

近年ファッションの世界では、こういった回顧展に加えて、ドキュメンタリー映画の制作も続いています。さらに老舗ブランドへの若手デザイナーの起用も進んでいて、ファッション業界は再編の様相を呈しています。これら回顧と再編の動きがもしかしたらこの先、ファッションの転換点として振り返られるかもしれないと、ぼくは想像しています。そんなふうに思ってみてください、今ファッションを見ることがいっそう楽しくなっていくのではないでしょうか。

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渡辺淳 代官山 蔦屋書店 アートコンシェルジュ
美学・美術史、服飾などを学んだ後、大型美術館のミュージアムショップで書籍の選定、調達を担当。2014 年2 月より代官山 蔦屋書店に勤務。アートに関わるあらゆる分野を関心領域としながら、コンシェルジュ業務に取り組んでいる

フリーダム・ディクショナリー
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