Free Paper DICTIONARY #184 しりあがり寿

暑い夏でした。命の輝く夏が終わりやがて秋がやってきます。秋は命が役目をはたして枯れてゆくいわば「劣化」の季節。がんばることも大切だけどどこかでダメを受け入れないと仕方ない。色褪せた神社、苔むす野仏、漏電する地下鉄、痛む腰あがる息、時代遅れのシステム、廃墟、老人だらけのアパート、キレる大人、自分と自分たちをとりまく「劣化」。すべてのものが崩壊や剥落、腐敗や溶解を経て無に帰すこの世界。無に向かう「劣化」にはそんな自と他の対立が消え全てが調和するエクスタシーがあるのかもしれません。またそれはワビサビはじめ日本に根づいた無常観とも近いものがあるのかもしれません。

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「ウサギは疲れました。」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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表紙「正義の勝利」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

劣化は人の心にやってきます。白に挟まれた人が自らを捨て白に変わり、瞬く間に少数派を圧迫していく様は、劣化を通り越して恐怖を覚えます。

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「ゆめをみたよ」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「廃墟の楽園」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「月面珍味皿」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「崩杯(ほうはい)」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

ヤカンが静かに回り出す。ゆっくりゆっくりくるりくるり。その姿はこのうえなく美しい。しかし回りだした瞬間、それはもう元のヤカンではない。水も汲めない、湯も沸かせない、ただ静かに存在感を放つだけの金属だ。そんな目的も機能も失ったヤカンの存在を許す場所はどこだろう。それは台所でも食堂でも金物屋でもショーウィンドウでもない。そう、それは美術館。故にヤカンは回って芸術となった。思えば回転は人類の歴史の始まりから、否この世界の成り立ちから我々と共にあり、大きく回り小さく回り、存在の根源を仄めかし、現れる諸相を巻き込み、いまや直線的な歴史の放棄を迫られた人類に、回転にこそ、その未来があるのだと錯覚を促す。素粒子が回り、銀河が回り、歴史が回り、我々も回る。
グルグルグルグルグールグル♪回れ回れ、回転に幸あれ!

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回転流茶室「弥次喜多障子墨絵」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「回るやかん」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「縄文人の暮らし」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「前方後円墳」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「赤いネジ」
2016年『瀬戸内国際芸術祭2016』より

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「世界遺産を巡る、チクビまっ黒族と、股のあたりキラッ族の闘い」
2011年『ブリキの方舟』より

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「オレの王国、こんなにデカイよ。」
2006年『日本x画展…しょく発する6人』より

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「オヤジの国」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「オヤジの国」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「しがみつくモノ」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「ひろがるカケラ」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「ふくらむカケラ」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「月と腹筋」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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「オヤジの大空」
2018年『~ゆる和Ⅱ~ 月と劣化』より

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2018年『春眠不覚笑 Spring Sleep Smile』より

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「エビフライ」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「回転体は更新するダルマの夢を視る」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「回る白昼夢」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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「ピリオド」
2016年『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』より

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ディクショナリーってずーっとなんか求めてんだよね
カッコよさ?スマートさ?
やさしさ?今?
いっぱい いっぱい
何度も 何度も
ディクショナリとご一緒させていただきました。
ありがとー
しりあがり寿

しりあがり寿 Shiriagari Kotobuki
1958年静岡市生まれ。1981年多摩美術大学グラフィックデザイン専攻卒業後キリンビール株式会社に入社しパッケージデザイン、広告宣伝等を担当。1985年単行本『エレキな春』で漫画家としてデビュー。パロディーを中心にした新しいタイプのギャグマンガ家として注目を浴びる。1994年独立後は、幻想的あるいは文学的な作品など次々に発表、マンが家として独自な活動を続ける一方、近年ではエッセイ、映像、ゲーム、アートなど多方面に創作の幅を広げている。

フリーダム・ディクショナリー
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