MONOCHROME COLORS BY HIRO SUGIYAMA

「具象と抽象の間(はざま)」 ヒロ杉山

具象と抽象の境界線はどこにあるのか?この事は私が絵画を製作する上で、テーマにしてきた一つである。具象の作品が、その絵の持つ特徴、色や形や構図などを排除して抽象度をあげていった時に、人の脳はどの段階でそれを抽象画と判断するのか?シュミクラン現象のように絵の中に描かれた3つの点が、逆三角形に配置されただけで脳はそれを人の顔と認識してしまう。抽象と具象の認識はとても曖昧である。このブラックベインティングのシリーズは、既存の絵画作品に描かれたモチーフをシルエット化し、単純化していき抽象度を上げる。更にその絵の色彩を全て排除し黒一色で描くことにより、もう一段階、抽象度を上げるという実験をしている。ピカソやゴッホの絵画ように、記憶の片隅にその絵画が存在するものは、2段階抽象度をあげたとしても、脳内で抽象度が上がった作品を、元の絵に近づけようと脳はフル回転し、そこにあったはずの色彩を想像し始めるのである。しかし元になる作品を知らない場合は、その絵の抽象度は上がって行くだけである。1990年代の終わりに、私はシルエットで描かれた作品を発表した。モチーフの輪郭線を取り、その内側を黒の絵の具でフラットなベタ面に塗りつぶした。黒で塗りつぶして行くことにより内側に描かれた情報は消滅する。この時はまだ、具象から抽象へと突き進めることだけに興味が行っているだけだった。2020年より製作し始めた今回のブラックベインティングのシリーズは、一度、抽象度の進んだ絵画を、もう一度具象に引き戻すという行為を行なった。それは黒く塗られた部分に、また元の色彩を塗り直すのではなく、筆のタッチ、絵の具の盛り上がりにより画面に極端な凹凸を付けることで、そこに描かれていた元の絵を再現した。黒い絵の具で作られた凹凸は、画面に光と影による表情を与えたのである。鑑賞者は、その光と影の表情に反応し、見えない色彩を感じ始めたのである。そして抽象度は具象へと引き戻されたのである。このように私は、具象と抽象の間を、行き来しながら絵画の制作を楽しんでいる。

EXPLORING THE BOUNDARY BETWEEN REPRESENTATION AND ABSTRACTION IS A RECURRING THEME IN MY ARTWORK. WHEN REPRESENTATIONAL WORKS REMOVE ELEMENTS LIKE COLOR, SHAPE, AND COMPOSITION TO INCREASE ABSTRACTION, IT RAISES QUESTIONS ABOUT WHEN THE HUMAN BRAIN CLASSIFIES IT AS ABSTRACT. SIMILAR TO THE SCHMICKLARN PHENOMENON, THE RECOGNITION OF ABSTRACTION AND REPRESENTATION IS HIGHLY AMBIGUOUS. IN MY BLACK PAINTING SERIES, I TRANSFORM MOTIFS INTO SILHOUETTES, SIMPLIFYING THEM TO HEIGHTEN ABSTRACTION. EVEN WITH INCREASED ABSTRACTION, THE BRAIN ATTEMPTS TO IMAGINE THE ORIGINAL COLORS. UNFAMILIARITY WITH THE ORIGINAL WORK INCREASES THE LEVEL OF ABSTRACTION. IN MY CURRENT SERIES, I RECREATED THE ORIGINAL IMAGE BY USING BRUSHSTROKES AND THICK PAINT TO CREATE EXTREME TEXTURE ON THE CANVAS, ADDING LIGHT AND SHADOW WHICH ALLOWS THE VIEWERS TO PERCEIVE UNSEEN COLORS AND BRIDGING THE GAP BETWEEN ABSTRACTION AND REPRESENTATION. I FIND JOY IN NAVIGATING THE ARTISTIC PROCESS OF MOVING BETWEEN THE TWO.


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ヒロ杉山 Hiro Sugiyama

アーティスト、アートディレクター。1962年東京生まれ、東洋美術学校卒業後、湯村輝彦氏に師事。その後フリーとなり、1997年グラフィックアートユニット、エンライトメントを結成。ファインアートの世界で国内外の展覧会で作品を発表する一方、グラフィックデザイン、広告など幅広いジャンルで独創的な作品を発表しつづけている。さらにPV制作やVJなどの映像分野での評価も非常に高く、三代目 j soul brothers,EXILE、m-flo、安室奈美恵、BOA、 少女時代などヘライブ映像を提供してる。

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