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おきなわ連載 vol.3
多様な音楽生活について
香取光一郎(音楽家)
前回のプラウマンズランチベーカリーの龍馬くんからの紹介で、今回書かせていただく音楽家の香取といいます。ピアノ、アコーディン、フルートなどを演奏します。プラウマンズはとにかく素敵なお店なのですが、雰囲気によく合ったピアノが置かれていて、たまに朝からコーヒーを飲みつつ弾かせてもらっています。ピアノが奥まった部屋に置かれているので、人が弾いてると気付かずCDだと思っている人もいたり、お互いに予想外の反応が見られるのが楽しかったりします。毎週水曜にはとくに何もなければだいたいお店に行ってますので、またお会いできたら良いですね!
おきなわ連載ということで、本来なら自分が沖縄で音楽活動する上でどのようなことを感じているかなどを書くべきなのでしょうが、書くべきことがいろいろありすぎて何を書いて良いかわからないのです。ただ、一つだけ言えることは「どういう人が周りにいるか」に尽きると思っています。
沖縄はもちろん、今までに音楽を通じて知り合った大切な人たちはいたる所にいます。沖縄で生活するようになってから、そういった人たちとの繋がりがより深く、広く、継続的になっているのを感じています。それこそが沖縄での生活で得られたものだと思います。
これまで沖縄のいろんな場所で演奏して来ました。ライブハウス、カフェ、バー、ホテル、ギャラリー、学校、デイサービスセンター、公民館、ビーチなど、あげれば切りがありません。いわゆるステージでの演奏ばかりではありません。歌声喫茶、ちんどん屋、創作芝居の伴奏などでは、演奏家としての立ち位置だけでは完結しないところも多いです。
沖縄に来てから、とくに音楽活動の幅が広がってきています。自分自身、あまり何も考えず興味本位で面白いと思うことは何でもやる方なんですが、それに沖縄独特の人との距離感の近さが関係して、今の自分の音楽的状況が生まれているように思います。「人との距離感の近さ」とは感覚的な表現で申し訳ないのですが、例えば景色の移り変わりの早さを思い浮かべたら分かりやすいかも知れません。地域ごと、街ごとの差異など、移動距離の割に感ずる多様さは、沖縄に来たことがある人なら誰でも感じるところではないでしょうか。周りの音楽仲間を見ても、あまりに多様ですし、音楽関係の知り合い以外もあまりに多様で、多様さも過ぎれば、皆自分の好きなことをやり出すのではないかと。なので、どんどん過ぎれば良いと思っています。この文章の最初に、書くべきことがありすぎると書いたのはこの点からなのです。
近々の演奏スケジュールなどはこちらをご覧ください。
Facebook:@kouichiro.katori
Twitter:@katoriinu22
今回のコーナーの最後に、今までに自分が参加した音源やソロ音源のいくつかを紹介させてください。どのジャケットデザインもとても素晴らしく、その多様さを楽しんでもらえたらと思います。
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design:松井一平
最も長く続けているバンドで、主にピアノを弾いてます。このバンドにしかない音の方向性が見えたとき、自分にとって一つの自信になりました。本当ならこれからというところなのでしょうが、なぜか何のゆかりもないところに行って再構築してみたいという思いになり、それが沖縄に来る大きな理由になりました。
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design:山口参助
泊は唄の山田参助さんと、ギターの武村篤彦さんのデュオで、1stと2ndに自分も参加しています。ピアノ、アコーディオン、フルートを演奏しています。前述のpaapと泊は対照的と言っていいほど異なる音楽性ですが、どう「うたう」かを突き詰めていくとき、この二つのバンドは自分にとって、とても大事なバンドです。
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design:津野氏
ヴォーカルの綺繭子氏の作った詩に、自分が曲を作って伴奏している二人組です。それまでは主に器楽曲を作っていたのですが、詩のリズムに曲をつける楽しさを知りました。
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design:長谷川淑夫氏
長谷川淑夫氏とのフルートデュオです。フルート2本という限定されたシンプルな編成だからこそ生まれる自由さ、楽しさを感じています。
ピアノだけ弾いてた頃は、どうしたら自由に即興演奏をできるかという事に関心があり、あまり曲を作る方向にいかなかったのですが、アコーディオンを始めてから、自分の為の練習曲のようなものを作るようになり、その備忘録かつ技法確認の為のソロアルバムです。
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design:Lily Cassis
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design:Lily Cassis
これまでに作ったいろんな楽器編成の曲を、全てピアノソロアレンジにしようという試みで作りました。アコーディオン版もそうなのですが、ピアノ版もBGMとして聞き流せるオルゴールのような音楽を志向しています。
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design:ヨナハアヤ
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design:おおばさやか
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香取光一郎
ピアノ、アコーディオン、フルートなどの楽器を用いて、様々なジャンルのミュージシャンと共演。ピアノで参加しているバンド「paap」では、2008年8月にリスボンのジャズフェスティバル「JAZZ AGOSTA」とロンドンのカフェ「OTO」に出演し、好評を博す。アコーディオン弾き語りのソロ活動では、観客も一緒に参加できる歌声喫茶風ステージも行っている。また、沖縄ちんどん屋同好会、比嘉座の芝居の音楽などを通して、音楽と人とのより多様な関わり方を模索している。
http://katoriinu.lolipop.jp/
次の書き手は、桜坂劇場/Music from Okinawaプロデューサーの野田隆司さんです。