おきなわ連載 vol.5

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日々の暮らしに落とし込む

宗像 誉支夫 ( 宗像堂 / 宗像発酵研究所)

人類にとって根源的な仕事、必要とされる仕事とはなにか?自分にとって、実感としての幸福とは何かを考え続ける。

日々の仕事と向き合う中で、自ずと暮らしがそこに寄り添っていきます。

いい仕事とは何か?自分の仕事を研ぎ澄まし、削ぎ外していくことが人のため、社会に貢献していくのではないか、という仮説に基づいてとりおこなう。

人と向き合い自分の心地よさを感じる場所を見つける。調和がとれている。素材と向き合い自分の心地よさを感じる位置を見つける。素材と調和している。道具を使うとき、自分が心地よい使い方を探る。仕事が美しくなる。薪と向き合い、心地よい窯を仕立て上げる。薪を燃やす時の薪の選定と燃やす段取りを考える。心地よさを感じる窯に整える。薪を焚べるタイミング、薪の選び方がいいと美しく組み上がった薪の隙間から空気を吸い込んで、炎は美しく立ち上がる。

パン種にしている微生物たちと向き合う。どの菌がどのくらい増えていて、全体としてどんなバランスでの調和を目指すのかを感じる。自分の舌で心地よさを感じる。天気と向き合う。温度、湿度、風、雨、天体の配置を感じる。パン生地と向き合う。生地の組織、構造を感じる。生地の中の菌たちのバランスを感じる。美しい仕事は、美しい音を奏で、美しいリズムで人と調和する音楽のような存在。自分の出す音に心地よさを感じる。

全ての鍵になるのが「感じる力」と「バランス感覚」。自身の精神に矛先を向け分析し続ける姿勢があれば、どこまでも感じる力は開いてゆく。私は、人類の「感じる力」を信じる。滅亡までの間、生を謳歌し、今を楽しみ尽くすことができれば、少しでも長く生存できるのではないかと思っている。それが我々に残された唯一の選択肢、100 年後への責任を果たすことになるのだ。

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「バランス感覚」は、精神の揺さぶられる振り幅によって、より包容力を孕んだ豊かな感覚へと進化する。全ての経験が生かされてしまう結果となることが受け入れられるようになると次元が変わる。
「感じる力」への挑戦の一つは、日常の活動の中で日々の仕事の他に、小麦の古代品種の育種がある。古代品種の持つ力が人類の持つ「感じる力」を呼び覚ましはしないだろうか、という挑戦だ。美味しいインパクトが人を一番動かす。
近年、発酵が流行っているのは、日常の現実感の中に、リアルに自分の判断の中で、美味しいという結果にたどり着く工程が重要だと本能が感じ取っているからなのではないかと感じている。
集団で上滑りな情報に晒され続けていると精神に異常をきたす。それを回避すべく、快楽へと身体を委ねるのだ。
一見同じ行動のようだが、内容は大きく違っている。自身の快楽の質への問いがなければ、人類としての存亡は保たれない。有史以来、文字が残っているだけの歴史を指標にするのも甚だ危険だとは思うが、人類はずっと戦っている。遺伝子の存亡をかけて、国境のできる前の時代から。家族を守るため、民族を守るため、一族をもっと安定的に生存させるため。現在も、その営みに変わりはない。生存と欲によって世界は成り立っている。そして、戦いと戦いの間に、平和と安定を感じることができるのだ。日本のように、国を失ったことがない民族は稀である。世界の中で、幸せを感じる定義は、国がある、明日も生きられる、という生存に関する条件によるのに対し、日本人は、幸福だと感じている割合が18%と最も低い割合だという話を聞いたばかりだ。米軍によって担保される平和という状態に対する価値の結果と言ってもいい。
近現代史500 年をきちんと振り返り、各文明をフラットに評価しつつ、そして人類の愚かさもきちんと自分たちの一部だと認め、自分たちの種を存続させるために出来ることを選択したいと思っている。しかも、本能をきちんと起動させた上でだ。
さあ、人類の滅亡へ向けて、
我々の責任を果たそうではないか。
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宗像堂の本「酵母パン 宗像堂

宗像堂
沖縄県宜野湾市 嘉数 1-20-2
TEL 098-898-1529
10:00 ~ 18:00 水曜休
www.munakatado.com


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宗像誉支夫 / Yoshio Munakata

1969年生まれ。福島県出身。日本大学農獣医学部応用生物科学科、琉球大学大学院卒。研究所勤務を経て、画家・陶芸家の與那覇朝大に3年間弟子入り。その後、ふとしたきっかけからパンを焼き始める。家庭用オーブンでパンを焼いて配達するスタイルで3年営業した後、店を構える。

次の書き手は、コザのゲート通りにある加工肉の専門店TESIOの嶺井大地さんです。


フリーダム・ディクショナリー
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