おきなわ連載 vol.6 最終回
沖縄人になりたいんです
嶺井 大地 (TESIO)
いきなりこんな導入どうかと思うが。
13世紀、沖縄はまだ琉球という一つの小さな国だった。栄えていた隣の巨大国家中国。その当時は明と云ったそうだが、かの大国に琉球は冊封(さっぽう)といって、つまり貢物を捧げる事で明皇帝より国家としてのお墨付きを頂き、国交が活発化。大陸から沢山の技能集団が、現在沖縄に根付いているあらゆる文化の基を携えてこの邦にやって来たんだそう。
彼らは文化普及の拠点に那覇市の「久米」地区に集中的に住まわされ、エリートの血縁を尊んだ当時の村人は、久米地区のみでの婚姻、交配しか許さず、その甲斐あって大陸の血は濃く濃く保たれ受け継がれる。それは久米の外の人間と駆け落ちした僕の曾祖母さんの代まで続き、結果、色は白く一重でサラサラヘアー。もみあげ、なし。僕のこの、およそ南国的ではない見てくれはここに由来する事となる。
ご存知、琉球の民の身体的特徴は一目瞭然。浅黒く骨太ではっきりとした目鼻立ち。分かり易くガワ、で生まれを示せない僕はいつだって愕然としてきた。外側も沖縄的でなければ、内側をまさぐっても沖縄がなかった。言葉、文化、歴史。どれをとってもよく知らない。この地で生まれたという記憶も当然ないわけで、ある日気づいたら突然ここに立っていた。
僕は沖縄の人、になりたかった。
この地に生まれ育ち、これからも堂々生きていく気概を示したいが、生っちろい肌がどうもこの地に似つかわない様な、妙な気まずさに苛まれ僕は、幼少期より自意識過剰をこじらせながらこれまで生きて来た。
自身に流れる大陸の血。日本でありながらアメリカを抱えるこの土地。 僕自身も沖縄も、文化が溶け合った存在という点ではよく似ていると思う。だからこそ知りたいのだ。僕を、そして沖縄を理解したい。この土地に拒絶されているとの思い込みはマーブルに溶け合った何色にも定義出来ないお互いの得体の知れなさを潜在的に感じていたからかもしれない。
Have been trying to be an Okinawan
text by Daichi Minei ( Sausage TESIO )
Okinawa is an island located in the southeast of mainland Japan. Distance wise, she is actually closer to Taiwan and China than to Tokyo. She also has a long history of trading with the Asian countries around her and has been culturally influenced a lot from them. / In the 13th century, Okinawa was an independent country called Ryuku that had a strong bond with China. A lot of Chinese people visited Okinawa to spread their culture. Few had stayed to start a family in Kume, Naha and I am one of their descendant. People in the Ryukyu are known to have huge bone structures and tanned skin but I, a Chinese descendant, is pale and skinny. Because of this, I grew up always feeling like an outsider. / Surrounded by all the American bases, Okinawa is known to have a “Champuru(mixed) Culture” and I can relate to Okinawa from that perspective. / Koza, where I’ve started my business, is especially known for being influenced by the American culture. I own a handmade sausage shop that uses pork, the Okinawan staple ingredient; in Koza, the city of the Americans. / Champuru, this says so much about my identity and about this tropical island. /
Okinawa, an island full of nature and culture. You are full of wonders and I am so ready to see another side of you through my business.
沖縄県は中部、コザ。
この市街地にゲート通りと呼ばれるメインストリートがあり、500mからなる通りのどんつきには嘉手納基地のゲートがある。週末はここから基地関係者がぞろぞろと繰り出して、通りを埋める。クラブ、パブ、ポールダンスにライブハウス。店々に横文字のネオンが明滅し、喧騒は朝まで止まない。そんなリトルアメリカとも呼べる場所で僕はソーセージ店を営んでいる。
地元の人の往来は乏しく、観光客がわざわざやって来るこの街は様々な人種が入り混じりチャンプルーさながらだ。ある意味沖縄を象徴するようなこの地をステージに選んだ事、沖縄を代表する食材である所の豚肉で商売をしているのは成り行きによる所が大きい。 しかし「MADE IN OKINAWA」を掲げてコザでソーセージを捻る日々は僕のアイデンティティ形成に大きく関わっている。
沖縄は美しい島だ。
太陽に花、海。夏を謳歌し文化に歌い、歴史に翻弄されながらも何処か風まかせ。逞しく可愛い人々が暮らすこの島。胸を張って沖縄の一員でいる事を主張したがるのは、シンプルに沖縄が好きだからだ。この土地に生まれた事を誇りに思う。身体に流れる血がどうあろうが、見てくれがトロピカルでなかろうが、愛と誇りを以てこの地に立ちたい。
手仕事を通じて日々人と交わることで、僕は「沖縄の人」である事を表現している。良い仕事をしよう。その内ここになくてはならない存在として求められ、「沖縄のソーセージ屋と言えばTESIO!」という事になるやもしれん。クールだ。いずれそうなればとても良い。そんな事を想いながら、南の島に産まれた妄想気味の生っちろい店主は、今日もコザでせっせとソーセージを捻っています。
嶺井 大地 / Daichi Minei
2017年、沖縄市にて本格ドイツ製法による食肉加工専門店 “TESIO”(テシオ) をオープン。県内外のイベントにも積極的に参加。クラシックな製法をベースに、肉だねでおでんを拵えたり、ピザ味のソーセージを開発したりと、決してふざけてる訳ではなく楽しむ事に躍起です。
TESIO(ソーセージ テシオ)
沖縄県沖縄市中央1-10-3 1F
1-10-3 Chuo Okinawa city Okinawa Japan
TEL +81 (0)98-953-1131
11:00 ~ 19:00 月曜休 Closed on Mondays
http://tesio.okinawa