アート ブックの出会いかた
アートブックは、装丁やレイアウト、紙質やインクにいたるまで、アーティストの描く世界観を指先から感じとるためのこだわりがつまっています。思わず触ってみたくなる、どうしても自分の本棚に置きたくなる、そんな一冊を本屋さんで見つけてみてください。
「ハイストリートファッション」という言葉が最近あるそうです。
モードにストリートを取り入れることを指すそうですが、ハイブランドが続々とストリートファッションを取り入れて、コレクションを発表しています。
SUPREMEやPLACEなどのスケートブランドは発売日には長蛇の列が出来るほど人気です。
ファッション書籍もストリート系の写真集が人気です。
「DROP」という写真集がアメリカのpowerHouseBooksから最近発売されましたが、その中に写っている被写体はみんな人気ストリートブランドの発売日に並んでいる人たちです。
書籍の解説を見て、「DROP」という言葉は、リリースなどのスラングではなく、落下するという意味で使われていました。個人売買が簡単に行える昨今、好きな人だけでなく、高額で取引出来るものを目当てで並ぶ人もいますが、そういったブームも長くは続かないという皮肉を込めたタイトルなのかもしれません。
あ最近の書籍ではないですが、同じ出版社から出ている「LO LIFE:An American Classic」も根強い人気があります。全身Polo Ralph Laurenを身に纏うNYにいる集団「LO LIFE」。
彼らは、盗みなどありとあらゆる手段を使ってPoloを手に入れて着飾りました。
1980年後半のことです。今ではもうお店から盗むことはしていないと思いますが、ベストドレッサー選考会など、まだ活動はしています。
この「LO LIFE」の80年代後半の写真を集めた写真集です。
どちらの書籍にも言えることは、とても服に対して熱があるということです。
ただ、熱が違う方向にいってしまっていることも、また表しているように思います。
他にも様々なストリートファッションにフォーカスした書籍や写真集が沢山出ています。
それも、いつかまた忘れさられてしまうのかなと思うと切ないですが、まだ紙媒体に残っていた方が幸せなのかなと思います。
ブームが過ぎると価値がなくなる、誰もが欲しいものに価値が付く世の中ですが、
自分が見る本当の価値というものがとても大切なのではないかと思います。
都内大型書店を経て、代官山 蔦屋書店のコンシェルジュとしてアート・ファッション分野を担当。さまざまな企画・展示に携わる。ここにしかないものを探して、日々の仕入れに努めている。
若手作家の場合は出版点数も少なくほとんど選ぶ余地はありませんが、こと大御所作家の作品集となるといくつも出版されていたりして、どれを選んでいいのか迷うものです。もちろん選び方は千差万別なわけですが、ここではちょっとした指針を、特に写真集について書こうと思います。
そこで入手しやすいのが、編者やキュレーターが新たな視点でセレクトしたり、アーティストの活動の全体像からあらゆるシリーズの作品を網羅的に集めたりした写真集です。ある程度キャリアを重ねた段階で出版され、カタログレゾネや回顧展の図録などもこれにあたります。大御所の作品集で流通しているものは、ほとんどがこのタイプと言えるでしょう。
しかしそれこそ、こういった写真集は製作者のセンスがものをいいます。
そんな中でおすすめなのは、Louis Vuittonが継続して出版している「Fashion Eye」というシリーズです。著名な写真家が世界の都市を撮ったものを一人一冊に収めていくかたちで、ソール・ライターがニューヨークを、ピーター・リンドバーグがベルリンを、ウィン・シャが上海を、と、どれもハイセンスなセレクトとレイアウトでとても見ごたえのあるものになっています。またブックデザインも統一した版型を色違いで用いるなど、まさにファッションブランドらしい美的感覚にあふれていて、安心して手元に置いておける写真集シリーズです。
写真集は大型で高額なものばかりではありません。「Photo Poche」は新書版ほどの大きさの写真集シリーズです。いわゆるペーパーバックで、ハードカバーの作品集のような高級感はありませんが、著名写真家の作品を、代表作を中心に幅広く収めており、入門や資料として本棚に並べておくのにもおすすめです。
そして例えば、この2つのシリーズを見比べてみてください。同じ写真家のものもありますが、見え方の違いに驚くはずです。そういう違いも楽しむうちに、お気に入りの一冊に出会えるでしょう。
「Photo Poche」シリーズ、20年以上にわたり150冊以上が刊行されている
「Fashion Eye」シリーズ、現在10冊が刊行されている
美学・美術史、服飾などを学んだ後、大型美術館のミュージアムショップで書籍の選定、調達を担当。2014 年2 月より代官山 蔦屋書店に勤務。アートに関わるあらゆる分野を関心領域としながら、コンシェルジュ業務に取り組んでいる