他人の・顔を貸せ 第一回
老けた。鏡の自分の顔がどうしても受け入れられない。
そうか真面目過ぎだな。愉快が足りない。そうだ。
小象がブレイク中の大堀こういちに連載をお願いしよう。まずはタイトルが必要だ。
大堀くんへのメール
大堀くんへ 連載のお願いのタイトルを考えて見ました。丁度今、三島由紀夫の対談集を読んでいて、いくつか思いついたのでメイルします。
三島:ベケットでね、「ゴトーを待ちながら」ね、僕はゴトーが来ないのはけしからんと思う。これはいやしくも芝居でゴトーが来ないというのはなにごとだと、僕は怒るのだ。
次に、戦後の日本の「縄抜け憲法」についての三島由紀夫の例えが愉快。
三島:つまり憲法メニュー論というのは、レストランへ行ってメニューを見たら、ライスカレーだの、フライド・チキンだのそんなものしかないんで、チーフを呼びつけ、「この店は、フランス料理の看板を出して、こんなメニュー恥ずかしいじゃないか。おまえはカナール・ド・ロランジェできないのか」と言うと、チーフは「とんでもない。私、ちゃんとパリで勉強してきて、できます」「じゃ、それを持ってこい」そうすると立派なカナール・ド・ロランジェが出るんですね。「ほれ、ごらん、できるじゃないか。どうしてメニューに出さないんだ」「要望がありませんから」と答える。それが日本の憲法なんだ。
で、そのフランス料理名も大げさだから調べて見たら、正式には、Canard a l orange 鴨のオレンジ煮込み(カナール・ア・ロランジュ)だった。これも愉快だ。多分、三島由紀夫のあの真剣な「顔」が浮かぶからだと思うけどね。
続いて、安部公房との対談で、三島のセリフ、他者ということだね。きみの「他人の顔」の中で、デパートで、ある男を捕まえてね、おまえの顔を貸してくれというところがあるだろう。「顔を貸せ」というのは非常に日本的表現だが(笑)というわけで「他人の・顔を貸せ」をタイトルにしたので、それで書いてください。
以下大堀こういちからの返信。
というわけで「大堀こういち」書きます。読者のみなさんこんにちは、ディクショナリーには、以前「コメディクラブキング」で何度か登場させて頂いたかもしれません。とにかく本音を言えば「戸惑っている」です。しかし、桑原さんから「書いてみれば?」と言われれば、桑原茂-ファンとしてはこれは書かずにはいられまいという思いで未知の世界に飛び込んでみようと決心した次第でございます。まあ、今の世の中、「よくわかること」の方が少ないようです。まあいいか。の精神で乗り切りたいと思います。
さてさて、ご挨拶はこの辺で。「他人の・顔を貸せ」がタイトルなんですね。「他人の・顔を貸せ」これは多分(お前の顔を貸せ)と読んだらいいんですよね。確かに誰でも一度は言われたこと、又は、言ったことがあるんじゃないでしょうか?私も一度だけ言われたことがあります。それは中学生のことです。城之内武(仮名)という同級生が昼休みに私のところにやってきて、「放課後に顔貸せ!」と言ってきたのです。私は「なんでだよ!」と言いました。すると、「うるせい。顔を貸せ!」と凄むので、ちょっとビビって「ああ、貸してやるよ!」と言ってしまいました。放課後。校舎のウラで思いっきり顔を殴られました。一発だけ。思いっきりです。痛かった。いやあ痛かった。「てめえ」というのがやっとでした。「てめえ」しか言えない自分が情けなかったです。
何故、殴られたのか未だに思い出せません。人は「忘れたいことはわすれられる」ようです。やめましょう思い出すのは。私の為に。ただ、顔を貸したら「殴られる」ということを知ったんだと思います。
「顔を貸す」=「殴られる」
「顔を貸せ」=「殴る」
とにかく「気になる顔」又は「全く気にならない顔」を勝手にチョイスして、それを見ながら「殴る勢い」で色々と書いていこうと思っています。が、顔について書くかどうかはわかりません。書くかもしれないし、書かないかもしれないし。曖昧にとても曖昧に。つまり「行き当たりバッタリ」ということです。
本編 第一回
さてさて。今回の「他人の・顔を貸せ」はフォークシンガー小象。ご存知の方もいると思いますが、彼は、70年代の後半に取り残されたフォークシンガー。茶髪の髪は「ヅラ」なのでは?とよく聞かれるのですが、本人は「地毛」だといいます。サン
バイザーがないとたまにズレると言ってますが、多分「地毛」なのでしょう。サングラスから覗く目は、小さい。ヒゲは?これは、書いてるようです。
ヴィジュアル系フォークシンガーだからとのこと。唇が薄いです。唇が薄い人は薄情だと言われてますね。多分、薄情なんでしょう。全体的に「胡散臭い」ですが、悪い奴では無さそうです。ライブを浅草辺りでちょくちょくやってるようなので一度見てやって下さい。なんかどうでもよくなってきましたね。そんな時は「一度休む」です。休むことも必要なんです。ちょっくら海へでも行ってこようと思います。では。また次回。
1月19日木曜日の寒い午後今日の昼はインスタントラーメン 大堀こういち
桑原茂一からの提言
タイトルのニュアンスがうまく伝わらなかったようですね。次号に期待します。
大堀こういち(おおほり こういち)
宮城県出身。五月舎養成所卒業後、劇団健康(現ナイロン100℃)に旗揚げより参加し、92年に脱退。「フォークシンガー小象(しょうぞう)」というキャラクターで音楽活動と並行し舞台演出も行う等、精力的に活動。
主な出演作に、テレビ大河ドラマ『真田丸』、『黒い十人の女』、CM『ダイハツ企業~できる娘~編』、映画『ヒズミ』、『夢売るふたり』、『ライク・サムワン・イン・ラブ』、舞台『男子はだまってなさいよ!』、『天才バカボン』、こまつ座『十一ぴきの猫』、2.5次元シアター『學蘭歌劇~帝一の國』、グローブ座『市場三郎、温泉宿の恋』、明治座『TARO URASHIMA』など。