シオタアツシ
Starman
David Bowie
宇宙から来たようなあの人は、きっとROCK な素粒子になって宇宙に帰った。戦争とか無くなりそうにない世界なら、Starman になって違う星にでも行きたいもんだ。
I HAVE A DREAM
私の“夢” を語る前に、色々と思考の整理をつけなくてはならない。なぜなら、私たち人間は、日々あまりにも無数の夢を生成し過ぎているからだ。「あの娘とランデブーしたい」「地球上で自分以外の男が絶滅!?」などのくだらない欲望や妄想から、「増税やっぱりナシ!」「ボクの発明した装置で戦争が無くなる!?」などの願いや祈りまで。いや、そんなことが私の夢ではない。フランスのある哲学者曰く、「全てのものは形づくられる前に、まず夢見られている」そうだ。夢とは目の前の「現実」から相対的に発生した「想像」ともいえる。言い換えれば、現実が夢の反射でもあるということだろう。しかし、夢と現実にはたった一つだけ大きな違いがある。それは「重力」だ。例えば、重力によって自力では空を飛べない私たちが「空を飛びたい」と夢見たとき、空を飛ぶ感覚だけでなく、空中からの景色や、風の質感までも想像出来てしまう。
つまりそれは、想像が重力の影響を受けないことの証明だ。この宇宙では光や時間すらも重力の影響を受けるというのに、想像だけはどうやら重力を飛び超えてしまう。そもそも、視た事が無い・体験したことがない状態を、どうして映像化出来るのだろうか?想像の中では、過去にも未来にも行ける。例えば会ったこともないあの女優が、まるで峰不二子のように僕を惑わせてくることもある。その動画データはどこからダウンロードしているのだろう?宇宙にはそれら全てがアップロードされているエロサイトがあるんじゃないだろうか。それならば、そのサイトの会員になって全部じっくり見たい!・・・いや、そんなことが私の夢ではない。宇宙の端っこで、重力のおかげで安定していられる地球という星で、日本という小さな国のさらに小さな沖縄という島に生まれ、なぜか東京という座標に移動し、クリエイターの端くれとして創作活動をしながら、悲惨なニュースを横目に、日々の不満を口にしている私の夢。そんな私の夢は、結局「あの娘とランデブーしたい」である。無数の夢を差し置いて、どうしてもそこに至るのだ。実は、「目に見えない素粒子の世界を映像化したい」という夢もあるのだが、それがどういう映像なのか想像すら出来ていないので、そもそも夢として認識出来ているのかは疑わしい。そんなことより、確かに「あの娘という”不確かな存在”とランデブーしたい」のだ。そして、そんなことを夢見る余裕のある私のような毎日を、世界の何処かで誰かが、紛争や苦しみの最中に夢見ているだろう。“私” そのものが、すでに誰かに見られた夢なのかもしれない。
シオタアツシ
1980 年沖縄生まれ。CLOCKWORKS. クリエイティブディレクター風プランナー/ 佐々木潤とのユニットCLOUD3 のDJ。「時間デザイン」をコンセプトに、様々な企業やブランドの広告やコミュニケーションをプロデュース。している他、タイムトラベルや人工知能、花鳥風月などのテーマで、インタラクティブな体験が出来るデジタルアート空間の開発を目指して複数の制作活動中。
PEOPLE : シオタアツシ