みんなの反戦選曲ではなく、「そこはかとない」であることの侘び寂びがわかる人と対談します。

インタビュー構成・写真 桑原茂→
ページデザイン 小野英作

田中 いいんじゃないですか。だって、Spotifyも、そういう音楽の話になってきたら、選曲のプレイリストみたいなものが、唯一の試聴みたいになってきて、そのプレイリストみたいなものを公開しましょうと。僕はavexとサイバーエージェントが運営するAWAというのをやっているんですが、一般の人が、プレイリストを作れるのが売りなんですよ。まさに人類総選曲家化となる、ひとつのチャンスといったらおかしいですけど。
さらにそのプレイリストのランキングが日々発表される。たとえばロック部門のランキングは、今日はこの人がっていう感じで、プロの人だけじゃなくて素人も参加できるから、もしかしたら、一般人がプロの選曲家を凌駕して1位になったりする可能性も非常に高い。それはおもしろいじゃないですか。選曲がクリエイティブという。

桑原 最高!

田中 2種類あって、月額使用料980円だと、選曲をみんなに公開できる権利が与えられる。360円だと聴き放題だけど、選曲を公開できない。選曲してみんなに発表するのが気持ちいいですよ、しかもランキング入りするかもしれませんよ、と。

桑原 その使用料の10%ぐらいが選曲に入ってくるようになったら面白いよね。

田中 確かに!

桑原 お金が入ってくるというと嫌らしいかもしれないけれど、社会的な認知は上がるよね。

田中 本来はされるべきでしょうね。

桑原 それはグッド・ニュースだ。

田中 そういうところで差別化を図ろうとしていて、アップルとかに比べれば曲数もまだまだ少ないけれど、でも、自分もプレイリストを作ろうと思ったら、けっこうマニアックな曲が組めますよ。それでプレイリストを作って発表することが快感になると、世の中総選曲家時代がくる。こういう時代だからこそ、ものすごいセンスと知識をもった17歳の選曲家が出てくる可能性もゼロではないですよね。YOUTUBEでどんどん新しい音楽を聞けたり、違法でダウンロードもできるわけでしょう。違法を推奨するわけじゃないけど、若いから許される何かがあるじゃないですか。考えられない選曲をする若いDJが出てきてほしいけれど、正直若いやつほどつまらないですよ、いま。若いやつほど同じようなことばかりやって、曲を作るにしても同じような。前までもっと自由だったはずなんだけど、なんかEDMが出てきてからは特に。同じ音色で同じような楽曲で。たとえばEDMのヒットチャートの1位から100位までが、同じアーティストが作ったのかと言われても誰も疑わないような状況になってきていて、EDMの世界でやっていくには誰もが右倣えをせざるをえないのでしょうね。音楽で食っていくためだったらということを、いまの歳の僕達より真剣に考え出すと、そういう答えになったりするのも仕方ないのかなと思うと、頭ごなしに否定もできないかなと思ったりして。

常盤 でもそうなってくると、それは果たして楽しんでやっているのか、職業でやっているのかな、ということにもなってきますよね。

田中 傍から見ていると、楽しそうなんですよ。楽しいなら、いいんじゃない。僕らは関係ないしと思ってしまう部分もあったりして。もっと独自な、誰もつくったことのない音楽を作りたいなんて思わないのかな。

常盤 若いときって、やり過ぎるぐらいやるじゃないですか。誰もついてこなくなったから、多分これはダメなんだと思う、みたいな。

田中 多かれ少なかれ我々にはそういうところがあったし、でも今はいかに「あのアーティストが出している音色を……」って。変な話、情報がシェアされちゃって、簡単に手に入るんですよ。あの機械のパラメーターをこうすることであの音が出て、それを使ってあのアーティストはあの曲を作っていますって。

常盤 そうなんだ。本当にそういう、勘違いとか、さっきもネットでの勘違いという話もあったけど、昔20歳を過ぎぐらいに、MOODMAN、高井康生、宮川弾と4人でバンドをしていた時期があって、MOODMANが「アシッドジャズというのがイギリスで出来たらしい」という……

田中 言葉だけで、想像でしょう(笑)

常盤 アシッドジャズをやろうとしても、アシッド・ジャズは聴いていないんですよ。だから僕らは完全にサイケデリック・ジャズだと思い込んで。MOODがエリック・ドルフィーとかでのブレイクを作って、ブレイクビートの前で、高井がファズギターを弾いて、弾ちゃんがディレイをビンビンに効かせたフルートを吹いて、俺がシンセをピュイーンって、そういうバンドだったの。

田中 「アシッド」ってついているから。あれはアシッドハウスのあとに出てきたから、便宜上「アシッド」がついているだけで。

常盤 俺らは電化マイルス以降の…

田中 アシッドハウスはもうビキビキやったもんね。

常盤 だから、そういうシンセのギュギュっていうのと、サイケデリックが混ざったもんだと思っていて。それでクールスプーンとかと一緒にライブをやっていたんだけど。

田中 思いっきり間違っていた(笑)。

常盤 だから、TALKING LOUDを聞いてびっくりしたんだよね。

田中 だから本当に、みんなが賢くなりすぎちゃって、音を作るやつでも……前はやり方がわからなかったりとか、大いなる勘違いがあったからそういうこともあったんだけど、

常盤 そうなんです。たとえば海外であんなことを始めたやつがいるらしいということを伝え聞いて、こっちもやってみるんだけどなんだか別のができたりする場合も、あったかもしれない。ダメなものもあっただろうけど。

田中 そういう、謎のエラーを誰もしない、エラーをしないということは、トライもしないということですから。

常盤 音源とかも、同じものが使えちゃう時代じゃないですか。

田中 そうそう、一瞬でわかるからね。だからそれをみんなが右倣いで使っていっちゃって、世界中の人たちが同じ音質音圧で作れてしまうという。

常盤 だからクオリティの底上げはあるかもしれないけれど、変化はなかったりとか、飛び抜けることがなかったりとか。

田中 だからできたものは均一で、すごい高いクオリティかもしれないけれど、おもろいかと言えばそうでもない。本当にそんなことでいいのか、と思うんですよね。この間まで面白い音を作っていた子たちも、学習することで、欧米の一流、という言い方もアレだけど、いわゆるヒット・チャートに載るようなEDMと同じクオリティのものを作ってくるんですよ。この間まで、もっとクオリティは低かったかもしれないけれど、世界にどこにもなかった音を鳴らしていた人たちが、新しいのです、聴いてくださいって。どんなものか期待していたら、「えっ」って。これってそのまま、向こうのEDMじゃーんって。

常盤 ねえ、もうやっている人がいることをやるって……。

田中 つまらない。僕らは「これはあの人がやっているからダメ」「この人がやっているからダメ」と作風を消しこんでいって、独自性を最も重んじてきた。

常盤 そうか。でも、そういうものに対する考え方は違うんでしょうね。

田中 でしょうね。だから世に出ていくためには、この音じゃないといけない、このクオリティじゃないといけないというのがあって、確かにそうじゃないと受け入れられないというのもある。

常盤 でも僕はDJは最近フロアで外しまくってるんで……もう全然ダメなんだよ。5人ぐらいのマニアが抱きついてくるだけで、ちっとも……1セット目はそれに特化してやろうと思っている部分もあるんですけど。

田中 面白いな。羨ましいけどね。俺はプロとして絶対に外しちゃいけないという思いから、逆に守りに入ってしまう時があるのかな。

常盤 役割分担で、そうなっていったんじゃない。俺は、小西康陽さんと若い人と一緒なんで中間管理職なDJなんだけど。若い子は、ちょっとコピーぽいよね。生音のイベントでも、かける音はなんかコピーっぽい。やっぱりみんな、たとえば、オルガンバー的なことになってくるから。最近はジャーマンニューウェーブとかかけるかな?そういうのと、スキャットものとかをどう合わせたら変かというのをやっている。なかなかうまくいかないんだけど。若い子に対して、何をかけるかわからないことをする人がひとりいないとまずいなと思っている部分はあるんですけど。面白くなる場合はあるんですけどね。

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田中知之(FPM)
DJ /プロデューサー。8枚のオリジナルアルバムのリリースの他、多数のアーティストのプロデュースも手掛け、リミキサーとしても、布袋寅泰、くるり、UNICORN、サカナクション、FATBOY SLIM、Howie B、など100曲以上のリミックスを担当する一方で、UNIQLO、資生堂など、どこかで絶対に耳にしているCM音楽の数々も手掛けている。DJとしては、国内は全都道府県制覇、海外でも約50都市でプレイし、国内外のハイブランドのパーティーDJとしても活躍。また、『オースティン・パワーズ:デラックス』『SEX AND THE CITY』への楽曲提供の他、村上隆がルイ・ヴィトンの為に手掛けた短編アニメーションの楽曲制作など活躍の場は多岐に渡る。グルメ通としても知られ、各界著名人からの信頼も厚い。最近は自身のブランド、ListやConnecteeのディレクターとしての顔も。今年は9月30日にFPM活動20周年に突入し、これを記念した様々な企画、名付けて「FesPM」も始動。第一弾として初のオフィシャルYouTubeチャンネル「FPM20th」を開設し、アーカイブ全曲試聴や、全PVの公開もスタートさせている。更には20周年を記念したベストアルバムが記念日となる9月30日にavexより3枚同時リリース。
http://www.fpmnet.com/

常盤響
グラフィックデザイナー、フォトグラファー。mars art labolatory 代表。90年代に入り、CDジャケット、装幀等を中心にデザインを始める。それにともない写真撮影も始める。著書に写真集「Sloppy Girls」(新潮社)、「Freedom of Choice」(河出書房新社)、「GirlFriends」「GirlFriends2」「GiRL U WANT」(小学館)など。


フリーダム・ディクショナリー
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