福田和也 インタビュー
なぜ私達は戦争反対を唱えるのか?
改めて問う。戦争の是非?
「ファシストのパンク右翼」を自称する作家、
福田和也にインタビューした。
桑原 ラブ&ピースの世代は、ふわーっとしてて、毎日マリファナ吸って、そのうち平和な時代がやってくるみたいな、そんなアメリカのカウンター・カルチャーから青春が始まっています。「ラブ&ピース」を合言葉に戦争反対を唱えてきた私はいったい何者なのか?「なぜ戦争反対なのか?」地に足がついていない希薄な問いに、常に後ろめたい思いを持っていました。そこへ、福田さんが書かれた『地ひらく一石原莞爾と昭和の夢』との出会いは強烈な一撃でした。先の戦争はなぜ起こったのか? その真実を知ることになりました。戦争について、私は何も学んでこなかったと、改めて考えさせられました。友人達と勉強会をしたくなるくらいの衝動がありました。私は今「そこはかとない反戦選曲」という方法で選曲家らしい戦争反対活動を行っています。今日は私の稚拙な問いに忌憚のないお考えを聞かせ願えればと思っています。
福田 そんな大したものじゃないよ。
桑原 今もまた、あの戦争の時と似たようなことが起こっているように思えますよね。
福田 確かに。
桑原 「空気で戦争をする」ということをお書きになっていました。フェイスブックなどSNSでは「反戦」だなんてわざわざ言わなくてもみんなそう思っているよ、というムードに一見、見えますが、一歩そこを離れるとまったく違う世界が広がっている気がするんです。今、若い学生たちが中心になって、ラップのライブ感覚と同じ雰囲気で反戦活動を始めている。ミュージシャンのなかでもフリーペーパーを自主発行して反戦への思いを表現している人も出てきた。そういった空気感を、福田さんはどのように見ていらっしゃるんでしょう?
福田 ぼくはまあ、一応、学校の教員をやっているので、学生ちゃんたちがどうなのかってのは、ある程度分かります。全面的には分かりませんけど。自分のところの学生ちゃんたちは、簡単に言えば、恐るべきノンポリですよ。うちのキャンパスはすごい田舎。湘南藤沢キャンパスですね。立て看板ひとつ立ってない。
緒形 慶應は、三田のほうでもそんなに学生運動をやってないですよね。
福田 そう、やってない。ちょこちょこだね。
緒形 早稲田は革マル派が学園祭に関わっていましたけど、慶應はそういうことが、全然ないですよね。
福田 ぼくらの世代では、三田で看板立ててやってたよ。ぎりぎりだけどね。学生ちゃんも、ほんと大人しくなっちゃったからなあ。 しかも素直です。でもね、慶応の学費って、SFCだと150万円近い。そんな高い金払って僕んとこに来て、で、ユリシーズがどうとか言って学生運動みたいなことやってたら、それは最高の親不孝だよ。ぼくが親なら絶対学費出さないね。
緒形 SFCの学生さんたちが戦争についてどう考えているか、福田さんにはまったく感じるところはないんですか?
福田 テーマを決めて、学生さんたちと話をすることは結構あるけど、戦争をテーマにしたことはない。ただ、難しいね。物書きとして書くのと、授業するのとは、違うからねえ。それでもちょっと面白い学生さんがいると、嬉しいのは嬉しい。
桑原 『地ひらく石原莞爾と昭和の夢』のなかで、あの当時何が起こったのか、綿密に検証されています。福田さんのなかでどこか「来たれ、現代の石原莞爾」みたいな気持ちはあるのでしょうか。時代をきっちりと捉えて我々をベターな方向へ向かわせる気概のある若者や日本国家のあるべき姿を論じ行動する政治家の登場を待っているような余韻を残して、福田さんは筆を置かれたのだと感じています。確かに今日の日本の状況からみれば、誰もがノンポリになるでしょうし、しかもこの曖昧な平和が永遠に続くと信じている。しかし平和を維持するためには誰かが努力する必要があるという認識が欠落している。みんなで渡れば怖くない的な感じが蔓延しているということかもしれません。特に、大学生を相手に教鞭をとっていらっしゃるとなると、どうでしょう。たとえば、石原莞爾の本を読んだことがある学生はいらっしゃいますか?
福田 いないですね(笑)。
桑原 今の若い人たちが反戦活動していることに関してはどうご覧になっていますか?
福田 僕の周りの学生ちゃんたちはしてないから、あまり実感がないね。
桑原 反戦運動そのものは、福田さんから見てそれは当然だろうと思うのか、知恵がなさすぎるよと思うのか。どちらでしょうか?
福田 どうかなあ。ただぼくは基本、ファンキーな右翼なんで。あんまり小難しいことは嫌なんですよ。めんどくさいんだもん。まあ、そういうこと言ってるから怒られちゃうんだけどね。
桑原 では、今の安倍政権をどのように見ていますか。
福田 安倍さんという人はぼんぼんでね、で、ちょっと考えが足りないね。まあ、そういう人が総理やるのが一番安定するんですよ。
緒形 一次内閣と二・三次内閣は全然違いますよね。
福田 そんなに変わらないよ。安倍さんつて、顔見たらわかるけど、とにかく勉強したことがない人なんですよ。それが、普通の政治家一般と比べて、座りがいいんですよ。安倍さんは臓器にリスクがあるからね。お腹ね。だからいつも安全運転だよね。
桑原 安部さんは自分の考えで政治ををしているというふうに見ていらっしゃいますか。
福田 うーん。そうじゃないねえ。そもそも保守つていうのは自分のスタイルを守ることでしょう。たとえば、蕎麦屋とか床屋とか行きつけの店を決めたら、とにかくそこに通い続けて生活スタイルを守る。安倍さんには守るべきスタイルがない。
桑原 徴兵制が敷かれて、下手するとアメリカの代わりに戦争させられるんじゃないか、ということ。これがデモを起こしている人たちの一番の動機だと思うんですけど、どうご覧になっています?
福田 いや、安倍さんはそんな度胸ないですよ。岸が最後に安保をやったとき、あのときは死ぬ覚悟でやっていましたからね。国会構内の衝突のなかで女子学生が事故死したとき、それでも岸は平気でテレビを見て、ほらみんな野球見てるじゃないかって。それで自動延長、安保条約の自然成立で終わらせたんですよ。
桑原 学生運動していた人たちが検挙されたとき、釈放させるためにCIAの金が右翼を通じて学生側に流れていたという話を読んだことがあります。ということは、アメリカと岸はあの段階で合意していたわけではなかったんですか?
福田 反共だからね、結局。今は反共というのはアメリカのスローガンではないけど、岸とアイク(ドワイト・D・アイゼンハワーの愛称)つてのは、共作があったんです。岸が訪米したときにサウナに一緒に入ったんですよね。
桑原 そこで取り決めがあった?
福田 そう、そこで安保条約しますって話になったの。でもね、かつての戦犯がそこまでくるんだからねえ、岸という人は大したもんだし、おっかないよね。岸はたぶん三年半くらい巣鴨プリズンに入ってたんじゃないかな、佐藤栄作の奥さんのところに変な乞食みたいのが来たと思ったら、釈放された岸だったって。その孫が安倍ちゃんだからね。
桑原 最終戦争をすることによって平和が訪れるという石原莞爾の発想は、現状からは、どう捉えればいいでしょう。
福田 石原さんという人はもちろん大秀才だったけど、やっぱり信仰者だったよね。
桑原 宗教家?
福田 そうですね。結局、石原は宗教家と戦略家の両面を持ってる。昔は結構、出版社のお金が使えたんで、石原莞爾の伝記を書きたいと言ったら「いいすよ」つて感じで、それでぼくはヨーロッパに行ったんです。いろいろと周りました。ドイツのポツダムのサンスーシー庭園の近くに石原は下宿していたんです。そこで『最終戦争論』を書いてるんですよ。でね、その下宿していたところと、ポツダム宣言が=署名された場所が、本当に近かった。江藤(淳)さんにそのことを言ったら、すごい興奮してたよ。そういうことあるんだよなあって。石原莞爾は写真が大好きで、ライカを使ってた。ベルリンで写真をいっぱい撮っているんです。
桑原 合理的に突き詰めた揚句の果てに宗教があったと、本の中に書かれていました。福田さんは宗教自体も肯定されている?
福田 みんな知っていることだけれど。石原莞爾は国柱会から放逐されたんですよ。国柱会の三代目が、このままだと石原莞爾にのっとられちゃうと思って。
桑原 ヨーロッパで国柱会のご子息と豪遊されてたいたはずでは。ご子息を非常に尊敬し、いい関係にあったと書かれていたような気がしますが。我慢ならない何かがあったわけですよねえ。
福田 田中智学との関係も良かったけど、たぶん、孫の代になってうまくいかなくなったんじゃないかな。
桑原 軍人として成功した石原莞爾の影響力が怖かったってことですか?
福田 人間としての石原莞爾が怖かったんじゃないかな。
桑原 宗教によって石原莞爾は強くなったんでしょうか?
福田 あの人は大秀才だし、また、非常に繊細な人だったから、何か一本これはというのを持ってないと辛かったんじゃないかなあと思いますね。
桑原 石原莞爾の晩年はリヤカーに乗ってでも講義しに行くとか、宗教的な力が働いているようにも見えます。福田さんは。宗教的な力に対する理解はどのようなものですか?
福田 まあ、最初は軍事の面などを見ていくんですが。結局、魂というか、そういうところに入っていくんです。極東裁判のときに、石原莞爾は証言台に立ってるんですよね。証言台の周りに当時いた人たちと会ったけど、おもしろかったね。
桑原 確か石原が描いた理想というのは、簡素生活とか、いまでいうシンプルライフですよね。まさにヒッピー、農村のユートピアというか。1968年のパリ革命当時に、壁に「舗道の敷石の下はビーチ」と書かれていた言葉をトマス・ピンチョンはLAヴァイス』の巻頭に記してあります。1970年がヒッピーの描いた夢が壊れてまたアメリカが帝国主義になっていく姿を遠回しに描いています、映画も笑いどころ満載でおもしろかったですが……石原苑爾の描いたユートピアとアメリカのヒッピーの理想はどこかでつながっていませんか?
福田 石原の理想は、むしろイギリスっぽいんだよね。農村と工業をハイブリッドするっていう。それはイギリス人は割とやってますね。あんまり成功はしていないけど。ラスティン(※)みたいな話ですよね。
※注釈:ウォーラステイン・周辺資本主義諭(従属諭)
出版社に頼んで石原莞爾の関係者に会わせてもらったことがあったんだけど、またねえ、全部言うこと違うの。私の石原先生ってのがそれぞれにあるみたいね。一之江に石原莞爾の同門の三代目がいて、その人が熱中してるのは。スニーカーのコレクション。世間ってこいうものなんだなあって(笑)。
緒形 福田さんは宗教を信じてないのに、石原莞爾によくそれだけ共感できますね。
福田 宗教は信じてないけど、石原莞爾は信用してるよ。
桑原 信用なさっているポイントはどんなところ?
福田 やっぱり彼の場合は、戦争に勝つためのサイボーグみたいなものでしよ。こうやれば、世界戦争は勝てるという狂ったようなものを持った人間なの。それがだんだん「魂とは何か」を考え始めちゃう。日本陸軍が作り上げちゃった戦争ロボットが自意識を持ち始めちゃった、みたいな。
桑原 やはり若い人たちは戦争に非常に怯えている。若いクリェーターたちも、日本は戦争するんじゃないか、させられるんじゃないか、つてムードが。やっぱりあるんですね。ぼくらの周りには。
福田 SFCにはないよね。安倍さんも、もうちょっとていねいに説明すればねえ。そうすりゃそんなに若者たちも怯えなくて済むのにねえ。タカ派意識が強いから、そうやって敢えて敵作っちゃうんだね。
桑原 安倍さんは日本をどうしたいんでしょう?
福田 結局自分発じゃないんですよ。お父さんとかおじいさんの意思。安倍さんにしても、また麻生さんなんかにしても。自分発じゃないから、強い。そうやって、意志を継いだつもりになっている。絶対岸にはなれないんですよ、安倍ちゃんは。
緒形 桑原さんは、石原莞爾のどこに一番共感されたんですか。
桑原 ぼくはね、石原莞爾を書いた福田さんに魅了されたんです。ぼくが知っている日本じゃない日本を、ちゃんと教えてくれましたから。ぼくはそういう機会を与えられて、今戦争が起こるかもしれないとわたわたしているクリエーターに何を伝えてあげたらいいのか、と思うんです。それを福田さんに直接聞きたい、と思ったんです。
緒形 「徴兵されることになったら、ぼくはどうすればいいんですか?」って学生さんに聞かれたら、福田さんはどう答えるの?
福田 自衛隊員を紹介するってわけにはいかないけど。
桑原 自衛隊も暇なとき農業やるとかになれば、みんなが受け入れそうですけどね。そうもいかないでしょうけど。
福田 どうでもいい話だけど、ぼくのおやじが上野にビルを持ってて、そしたら自衛隊の人が事務所を賃してくれって言ってきたの。そこで自衛隊の募集はじめたの(笑)。
緒形 福田さんの意識は、結局は指導者の意識なんですよね。上から指示を与える人間の意識。だから石原莞爾について、あれだけ書けたんじゃないですか?
福田 石原莞爾は修行は修行でちゃんとやってます。ぼくみたいに酔っぱらっている人間とはわけが違う。
桑原 石原莞爾をテーマにしながら昭和という時代を描いてこられた福田さんに、改めてお聞きしたいです。今という時代、ぼくらがなんとなく「不安だなあ」「やばいなあ」、「まずいことが起こるんじゃないかなあ」と思っていることに関して、福田さんは、こうしたらいいんじゃないかということを、あまり話したくない?
福田 ぼくはねえ、あんまりくよくよしたくないんだよね。
桑原 それはどういうことですか?
福田 不安とかやばいとか自分が感じてないから、それについて話すことができない。とはいえ、教員としての責任はあるからね。
桑原 それは単位を与える責任?
福田 いや、学生さんには、お土産をもって世間に帰ってほしいんだよね。
桑原 後ろから背中を押してあげたいわけなんですよね?
福田 最初は学生さんたちと飲んでたんだけど、ある時からこいつらと飲んでちゃだめだと思い始めた。
桑原 それはなぜなんですか?
福田 年が違うからねえ。
桑原 真意が伝わらないから?
福田 伝わらないわけじゃないんだけど。
桑原 学生に分かってほしいことを、福田さんはたくさん持っているんじゃないですか?
福田 だけど、ぼちぼちじゃないと伝わらない。
桑原 ダイレクトに伝えようとしないということ?
福田 いや、できないんです。どんなに言葉を尽くしても、ほんの少しずつしか伝わらないんですよ。
桑原 沖縄に行って思ったんです。沖縄の人はまわりくどい。東京にいると。米語圏にいるみたいに単刀直入にもの言う。でも、沖縄の人は、傷つけないように、相手が自ら分かるように、伝える。それはもともと日本人のなかにもがあったものなんですよね。でも、それが戦後、アメリカ人化が進みどんどん単刀直入社会になった。生きることの目的が、ある目標に向かって進むこと、いい家庭を作るとか、いい家に住むとか、いい車に乗るとかになっちゃった。意外と沖縄の人たちは今日の楽しさを優先させていますよね。学校で今日の楽しみを優先しようという言い方はどうですか?
福田 それ言っちゃったらおしまいだ(笑)。
桑原 今の学生さんたちは何を目指しているのでしょうか?
福田 昔は野心家だったけどね。今は就活だね。
桑原 どういう会社に入ることで未来が明るいと思っているのでしょうか?
福田 ぼくにも分からない。ぼくだって就活したことないからね。
桑原 でも、学生の悩みを聞くわけですよね。
福田 みんなシャイだから言わないね。
桑原 アップルに入りたいとかは?
福田 ないねえ。
桑原 日本はこれから先もしばらく戦争することはないよと学生たちに言ってやれますか?
福田 中国はチキンで自信がないから、まだまだ大丈夫って思ってたけど、経済が破綻したら、危ないね。今の中国人の爆買いって、異常でしよ。経済の破綻は近い。そうすると、戦争を始める可能性は大いにある。中国が戦争を始めたら、隣国の日本は巻き込まれる。
桑原 オバマ大統領はどうでしょう。
福田 彼はアメリカ初の黒人の大統領だから、それは素晴らしいことと思う。歴史を修正していくって話だからね。ただ、それがどこまで良いのかなって気がしますけどね。
桑原 オバマが大統領になるとき、小さな気持ちが無数に集まって彼を押し上げたという、まさに、ピースフルな、ヒッピーの時代の再来があるんじゃないか、と一瞬目くらましがあった。日本にいるぼくたちにも。だけど、彼は大統領になってから、どんどん顔が変わっちゃった。最近のオバマは分からないですが。
福田 でも。政治家はそんなもんです。
桑原 今日は、おまえら戦争反対なんて言ってもしょうがないよ、という話が出てくるのかと思いましたが。そういうことじゃないんですね。
福田 戦争を怖がる気持ちは分かるけど、国の尊厳を守るために、武力以外にどんな手段があるのかをもっと考えなければだめだと思う.言い方は難しいけど、安倍さんは頭の中に何もない。何もないから、どんどんがんぱっちゃうんだ。
桑原 すべてはアメリカに操られているからそうなるんだとみんな思っている。それはおかしい?
福田 まあ、安部さんはもうちょっと責任もってもらったほうがいいんじゃないかと僕は思ってるんだけどね。
桑原 『地ひらく一石原莞爾と昭和の夢』のなかで、岸田國士戯曲賞の岸田さんなんかも、あの頃、決して戦争に反対しているわけではなかった。この事態を乗り越えてこそ近代を迎えることができるなどと言っている。文化人って一体なんなんだろうって、不思議に思いますね。時代に迎合して自分の立場を保ちつつ、上手に時が過ぎるのを待つ、といった感じなんでしょうか?
福田 みんな保身です。
桑原 みんな知らないですよね。岸田圃士戯曲賞を有難がってる人は岸田さんがもともとどういう発言をしていた人だったのか、知ってるのかな?
福田 男ババアみたいなやつでしよ、岸田さん。
桑原 演劇界だと直木賞レベルですよね。
福田 つかこうへいが滅びてしまって、演劇はもうしようがない。
桑原 つかこうへい以降、もうダメですか?
福田 紀伊国屋劇場で、「熟海殺人事件」を観たときは衝撃だった。つかさん以降にあの衝撃はない。
桑原 福田さんは、あらゆる分野に精通しておられて、日々の洋服や食べ物はもちろん、映画や音楽、、あらゆることに自分の美意識を貫いておられます。そういう方が石原莞爾について書いている。その事が僕には非常に意味があります。感性を大事にされる方が、この時代をどう捉えているのかが大事なんです。私が自分を見つめ直すきっかけになった。『地ひらく一石原莞爾と昭和の夢』(福田和也著)をもっと多くの若者に読ませたいと思います。そしてもう一度澄んだ目で世界をこの日本を見つめ直してもらいたい。
福田和也への三つの質問
今回のインタビューは幸運にも、帝国ホテルのインペリアル・バーでお話を伺うことができました。初めて体験する老舗のバーは、重厚で落ち着きがあり、まさに保守的な成功者たちの憩いの場として非の打ち所のない場所でした。
私が頂いたモヒート・カクテルの味も格別で、ついつい杯を重ねることになり、念願の福田和也さんとのインタビューは、雑談も含め大変有意義なものになりました。よって、後日、私が知りたかった質問を、改めてお願いすることにしました。以下がその質問と回答になります。
質問一 今日の日本が戦争をする必然性とは、どのようなものでしょうか。
福田 もしも中国の経済が危機に陥れば、これまで歴史が繰り返してきたことを踏襲し、中国は戦争で道を開こうとするだろう。隣国の日本が巻き込まれることは必至である。
そのときはアメリカとともに戦争をするしかない。最近の中国の日本における爆買いの増長を見ていると、中国経済の崩壊は間近にせまっているという気がする。中国の脅威は北朝鮮の脅威よりも現実的である。
質問二 現状の戦争反対の動きをどのように、ご覧になっていますか?
福田 実際問題として、自分の息子が徴兵されるのは嫌だ。学生たちが戦争を恐れ、反対する気持ちも分かる。けれども、国を保ち、文化を維持するためには、戦争を一つの手段として考えなければならないだろう。アメリカに頼るだけでなく、自分の国を自分たちの力で守るにはどうしたらいいのか、ということについて、もっと考えてほしい。
最後の質問 福田先生の考える日本の政治のあるべき姿を教えてください。
福田 政治的現実を超えた知、高度の理性を持つ。戦争についてのイマジネーションを持つ。
福田和也 ふくだ・かずや
1960年、東京生まれ。文芸評論家。
慶應義塾大学環境情報学部教授。現在の日本の文壇、論壇、アカデミズムで広範な活躍を見せる。
93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、2002年『地ひらく石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。
主な著書に、『昭和天皇』『大宰相 原敬』『其の一日 近代日本偉人伝』『村上春樹12の長編小説 1979年に開かれた「僕」の戦線』がある。