ヴィンセント博士の ロマンティック物理学vol.13

Writting / ヴィンセント博士 @VINCENT_R_P (Twitter)
これはいわゆるアインシュタイン以降の物理学ではない。というかそんなハイレベルな知識は必要ない。僕らはこの世界を五感によって認識あるいは観測していて、特に目に見えるものばかりを前提とした社会で、今日もウダウダ生きている。しかし、この世界や宇宙には目に見えないもののほうが圧倒的に多いのだ。重力だって、音楽だって、感情だってそうだろ?偉い学者の理論や数式はわからなくてもいい。ただ「目には見えないかそけきものたちが、確かに在る」という視点で、この現実を甘美に観測すること。-それが、「ロマンティック物理学」である。

第13回 我々ハ地球人ナノカ?

休暇をとって、沖縄は宮古島に3日間ほど滞在し、ただ毎日昼はコバルトブルーの海を、夜は無数の星空を眺めて過ごしていた。都会にいると全く忘れてしまう事だが、つくづく地球とは、生命にとってなんと生きやすく、豊かで美しい星なんだろうと思う。地球の最初の生命は、原始地球の海から誕生したとされている。DNAやRNAといった生命を構成する種が隕石に乗って宇宙から飛来し、地球の海を媒介にして最初の生命がつくられたらしい。地球という奇跡的な環境に、生命の種が奇跡的に届いて、奇跡的に生命が誕生し、そこから多様な進化を経て僕らニンゲンがいる…。海は子宮であり、宇宙は生命の故郷でもある。海や星空を眺めていると、どうしてもそういった壮大な奇跡の連続ストーリーを感じ、感謝や畏敬の念を抱くのは僕だけではないだろう…と思っていた矢先。ビーチでひたすら自撮り写真を取っているギャルの集団が、砂浜にペットボトルを捨てるわ…無邪気にシュノーケリングを楽しむカップルが、海中の写真のために珊瑚の上に座ったり、足場として踏みつけたりするわ…そんなシーンを多々目撃し、残念な気持ちでいっぱいだった。よく観ると、去年よりもビーチにはプラスチックのゴミは多いし、浅瀬の珊瑚は枯れている。珊瑚は植物ではなく、動物だ。一度踏んでしまえば死ぬし、生き返らない。instagramにアップするためのクソどうでもいい写真のために、海を汚すな!と怒りを覚えた僕は、ビーチの監視員と化し(ただの観光客)ひたすら目につくゴミを拾ったり、珊瑚を踏みつける人たちを注意して回ったりもした。こんな美しい海を壊して基地をつくれるニンゲンの気持ちや、核廃棄物を流せるニンゲンの気持ちは、僕には到底わからない。巨匠・宮崎駿が「風の谷のナウシカ」や「もののけ姫」で伝えたかった事はちっとも伝わっていないじゃないか。このまま数十年後も、地球は生命にとって住みやすい場所であり続けられるのだろうか…?そんな不安な思いを抱くバケーションになってしまった。

そういえば、イーロン・マスクが2060年までに人類100万人を火星へ移住させる計画を発表してから2年が経とうとしている。これは「人類という種を継続するためのリスクヘッジ」、と彼は言った。そんな大胆な計画がちょっと先の未来で現実的になりつつある現代。火星に移住した後、地球に住む人類と火星に移住した人類は、どう定義されるだろう?地球人と火星人になるのだろうか?そこには、再び格差や差別が生まれるだろうか?あるいは戦争をしてしまうだろうか…?あながち、あり得ない話ではない。いまだ人類は核を自ら保有して無くす気配はないし、多くの人が国ごとの経済的な勝利ばかりを追求し、莫大な利権争いを続けていく過程で、地球環境はどんどん壊されていく。そんな事言いながら、僕らも都会的な暮らしを捨てる事が出来ない。ほとんどの人が、汚れていく海や、他の国で起きていることなんか知ったこっちゃないだろう?自分の生活半径や、日本という国が「平和」で、自分にとって大切な人たちが「幸福」であればいい。「幸福」や「平和」とは、観念であって実体が無いため、限定的なんだ。

つまり、人類は未だに地球全体で共通する「幸福」や「平和」を観たことがないんだ。同様に、多くの国で「経済的な豊かさ」を求めているが、これもまた「お金」という本質的には存在していないものを、さも在るかのようにつくりだしたに過ぎない。(1万円札を1万円という価値があるモノ、という事にしただけ。わかるよね?)どの国の政治家も大企業の社長も、スピーチで言うでしょ?「我々の幸福を…」とか「我が国の経済発展のために…」って。今、人類はそれぞれ違う「我々」の集団同士が、決して観えない「幸福」や「経済」を追い求めて争っている状態にあるとも言える。そう、人類が誕生して700万年が経とうとしているが、我々はいまだに、本質的な「地球人」になれていないんだ。それゆえに、地球全体のことはほったらかしでいられる。では、どうすれば我々は「地球人」になれるのだろう?その一つの答えとして、次回から数回に渡って地球人とは何か?を定義するために「生命」について語りたいと思う。「幸福」や「お金」は、その実体を観ることは出来ないが、「生命」は実体的に観る事ができるからだ。「生命」とは何かを知ることは、いつか故郷になる地球を理解することにもなるし、人種差別だってアホらしくなる。なぜって、この宇宙で発見されている生命は…たったの1種類だけなんだから。(つづく)


フリーダム・ディクショナリー
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