ヴィンセント博士の ロマンティック物理学
第一回 LIFE IS MUSIC
地球のみんな、ヤーマン!ロマンティック物理学者のヴィンセントことヴィンちゃんです。これからする話は、「大学でリアルにニュートリノ研究してます!」みたいな本気アインでガチシュタインな人には一切無意味なヨタ話だ。むしろ「物理学とかよくわからないけど、なんかこの宇宙って不思議なことが一杯あるぅ~」くらいの気持ちがある可愛い二十代の女子や、トイレでせんずりこいた後に宇宙を感じてるような、音楽好きのチェリーボーイのための、あくまでもロマンティック物理学です。これは。さて、今日のテーマは「LIFE IS MUSIC」。僕らがふだん聴いている音楽。そういったものに対する、僕なりのすごくどうでもいい理論を話してみようじゃないか。
★正体不明の音楽
2016年上半期の音楽界はヤバかったね。デビッド・ボウイにつづき、あのプリンスまで死んじゃったよ…。プリンス。殿下。電荷じゃなくて殿下。プリンスについて説明するのはムダなので省くが、万が一「プリンスを知らない!」という人がいたら、とりあえず家にあるCDやレコードを全部捨てて、プリンスを聴くところからもう一度音楽LIFEをやり直して欲しい。殿下ご本人は目にみえないレベルの素粒子になって、この宇宙に溶けてしまったが、ありがたいことに実に多くの名曲や映像をこの物質次元上に残してくれている。感謝しよう。そして、傑作「Parade」や「Lovesexy」を聴いて、震えて眠れ!…いや、まあその辺は好みなんだけども。とか言ってそんな僕も、思春期のまっただ中に深夜のMTVではじめて殿下を目撃し、その音を聴いた時は、正直理解不能だった。
宇宙の5%は僕ら人間の知る原子で構成されていて、残り95%は正体不明の物質やエネルギーで満ちているように…かつての僕にとって、プリンスはそうした正体不明の何かだった。まるでエロスという名の暗黒物質!妖しさのダークマター!彼の歌もメロディも、たしかに音として聴こえてはいるが、それまでの僕が聴いていたROCKやPOPSなどの音楽として認識することは難しかった。何かこう、人じゃないものの卑猥なビデオを見てしまったような複雑な気持ちで、正直もうなんというか…アレだった。完全に引いていた。
ところがだ。その翌日から、プリンスの音楽が脳内有線で勝手に流れてくるではないか。しかし周囲はPUNKかHIP-HOPを聴いているヤツがイケている時代だった。誰かにプリンスのことを話したら虐められるのでは?という恐怖感で一杯だったし、自分のセンスがマジで不安になった。雨の日の曇りガラスに「ぱーぷるれいん」と書いては消したりしていた。それは、同じクラスのライオネル・リッチー似の女子から、欲しくもないバレンタインチョコをもらっただけで意識してしまい、友だちにバレないようにこっそリホワイトデーのお返しをする…そんな現象に似ていた。十代という時間は、実に多くの「理解不能」を体験するSFみたいな毎日だ。
そんな当時の僕のように、ある特異な音楽に出会ったときの、自己解析できない感情のふるまいは多くの人が経験することだと思う。そして、けっこう後になって、その音楽にハマってしまったりして「なんであの時わかんなかったんだ!」みたいな経験…あるでしよ?
★僕らはみんなウェーヴィクル
そんな風に僕らの感情を震わす音楽っていうものの物理的な正体は、様々な「音の波」とリズムの集合であり、音の高低によって特定の「波形」を持っている。もし今、君が音楽を聴いているならば、それはその音楽というの「波」と君自身が干渉している、あるいは互いに触れ合っていると言ってもいい。まあ、実際は音の波だけじゃなく、僕らはこの宇宙であらゆる「波」と絶えず触れ合っているんだけどね。いつまでやってんだよ!って言う気も起きないくらいに。
水も「波」だってことは偏差値30くらいの偽サーファーでもわかるだろう。ちなみに、今僕らが視覚で捉えることができているこの世の全ては、可視光線という波。そのごく狭い波の範囲だけで、君たちはイケメンだとかブサイクとかを判断されているわけです。
現実はX線や赤外線、電磁波(最近じゃ重力波まで!)…など目には「見えない波」のほうが多いというのに。
(※ちなみに企業の偉い人が言う「時代の波」とか、競馬場のおっさんが言う「ビッグウェーブ!」みたいな波は、物理的な波とは関係ありません。)
話を戻そうか。つまりはプリンスという特異な「波」は、十代の僕にとっては決して気持ちのいいものではなかったということだ。少しずつオトナになるにつれ、ようやく殿下が生み出す音のエロティックな質感や重さ、妖しくもメロウなグループがわかるようになってきた。煙草や酒の味を覚えていったように、泣いている女の抱きしめ方がわかったように(わかってない)、わかってきたのだ。それはつまり、プリンスの音楽が持つ「波」と、オトナになった僕の周波数が“コヒーレント(波動が互いに干渉しあう状態)”になった、ということだ。
そう、僕ら白身もそれぞれ違ったリズムを持った「波」なんだ。みんなその事実を結構忘れて生きているけど…そもそも人間という存在も、ご存知の通り無数の原子の集まりなわけです。さらにミクロにしたら、もっと小さな電子や素粒子の集まりでもあるってことだよ?聞いてる?そこの素粒子たち。あと、君たちっていう極めて小さな「粒子」の集まりは、同時に「波」の性質を持っているわけですよ。「粒(パーティクル)か波(ウェーブ)か?」ではなく、「どちらも同時に(ウェーピクル)」ってことね。ヤバい。二重人格。超サイコ野郎。ってことはつまり、僕ら白身も、音楽のように固有の周波数を持った「波」という一面もあるということだね。プリンスの音楽も「波」。僕らニンゲンも「波」。
ここで、十代の僕に起きたあの現象を解説すると…
” 199x年のある深夜ーブラウン管テレビの画面とスピーカーから発生した<プリンス波>は、ある少年Vという粒子群<V粒子群>に到達し、干渉を起こす。<プリンス波>と<V粒子群>の波は当初、互いの位相が合わずにインコヒーレントに観えた。しかし、<V粒子群>はその最初の干渉によってゆっくりと時間をかけて周波数を変化させていくそれから十数年後、波形の変化した<V粒子群>は<プリンス波>と再会し、時を経てコヒーレンスな状態になった″
つていうことになる。…これ、マジでそれっぽいだけで、よくわからないけどそんな感じだ。
★君という一枚のレコード
今、君は呼吸をしていて、心臓は動いてて、全身を血液が流れている。そこには君だけのリズムがある。生きているというだけで、僕らのカラダは絶えずリズムを刻み、音を奏でているのだ。その生命の動きを「波」として捉えてみると、みんなそれぞれ違ったオリジナルの波形を持っている。いわば僕らはみんな、再生されているレコードのような存在だ。みんな違った歌やメロディを持った、たった一枚だけのレコードなんだよ。だから、合わないヤツとはどうしても合わない。もし気の合わないヤツがいたら、「あいつUK盤の45回転だな!」とか思えばよろしい。逆に、全然違うジャンルなのに不思議と気の合うヤツはBPMが同じかその倍数が同じ。そして、もし急にオトナっぽくなった女子がいて「アイツもしかして夏休み中に2コ上の先輩と…!?」なんてピンときたら、もうその女子はどこかの有名DJにエロRemixされて、大人マスタリングされたんだと理解しよう。それも愛だ。
時にはそうやって僕らそのものが音楽なんだ”という風に考えてみよう。するとどうだろう。逆にふだん聴いている音楽が「生命」そのものに思えてはきませんかね?この宇宙に無数に存在している生命や、かつて存在していた生命。そういう無数の生命という捉えようの無い「波」を、アーティストたちはキャッチして「音楽」という人間が聴く事のできる波長域に変換しているのではないだろうか?…もしそうだとしたら、ロマンティックだね!!
いや~それにしても、改めて聴いてみるとデビッド・ボウイもプリンスも、やっぱ宇宙人だわ!ってことでまた次回。