ヴィンセント博士の ロマンティック物理学

Writting:Vincent / Design: CLOCKWORKS.
これはいわゆるアインシュタイン以降の物理学ではない。というかそんなハイレベルな知識は必要ない。僕らはこの世界を五感によって認識あるいは観測していて、特に目に見えるものばかりを前提とした社会で、今日もウダウダ生きている。しかし、この世界や宇宙には目に見えないもののほうが圧倒的に多いのだ。重力だって、音楽だって、感情だってそうだろ?偉い学者の理論や数式はわからなくてもいい。ただ「目には見えないかそけきものたちが、確かに在る」という視点で、この現実を甘美に観測すること。-それが、「ロマンティック物理学」である。

第3回 / Gravity Man.

あっという間に3回目を迎えたロマンティック物理学。難しいことは全部抜きで、ワクワクするようなロマンティックなことだけをタラタラ書こうと思っていたのに…前回、このコラムで相対性理論について触れてしまった結果、100人のアインシュタインに延々と追いかけられるという悪夢を見たヴィンちゃんです。 Aphex Twin のCome To DaddyのPVみたいで、マジで怖かった…。それでも、今回はさらに激ムズな一般相対性理論に関することをテーマにしたいと思う。特殊とか一般とか、何が違うの?っていう感じだが、そんなことはどうでもいい。特殊相対性理論は地下アイドルで、一般相対性理論がA〇Bだと思えばいい。そんなアイドル集団のセンターは顔面が歪んで…ではなく(失礼)、一般相対性理論のセンターもとい中心的な理論は「重力は空間を歪める」である。…そこにロマンティックはあるのか!?

みんな空間を歪める魔法使い

大体、「重力は空間を歪める」とか言われてもほとんどの人が楽しくないし、興味ないだろう。ちょっと言い換えてみようか。「…そこのあなた、空間を歪めてますよ?」。そう、今この話を読んでいる君の事だ。質量を持つものには、すべからく重力が働いているので、「(質量を持つ)物体の周りでは空間が歪む」=「あなた自身の周りの空間が歪んでる」とも言えるんだね。

もちろん、君だけじゃなくあらゆる物体が空間を歪めている。パッと見て、空間に影響が無いのは質量がたいした事ないから。しかし、太陽くらいの大きな天体だと、周りの空間が歪む結果「光が曲がる」という現象をちゃんと科学的に観測できる。ちなみに、太陽ですらほんのちょっとの角度(何千分の1°程度)しか歪められないのだから、自分が空間を曲げているなんてわかるわけないね。

それでも、あらゆるモノの周りの空間は歪んでいるし、君自身の周りの空間だって、君という質量で生まれる重力で歪められている。「オレなんて、本当に何も出来ない!」とか思っている君。大丈夫。君は間違いなく空間を歪めるほどのパワーを持っているんだ。魔法使いみたいじゃない?逆に、ブラックホールくらいの超重力を持つ天体だと、もう誰が観てもわかる位に空間は歪む。ブラックホールに光が吸い込まれているような写真を見たことはないだろうか?まるで、ブラック企業に魂を吸い取られていく新入社員の姿のような…あるいは、ブラックな男にハマつてしまい、どんどんヤバい方向に堕ちていく元クラスのアイドルの哀しみのような…。その新入社員も、元クラスのアイドルも、はじめは夢があって、純粋で、まっすぐだったはずだ…。そう、ブラックホールの近くにさえ行かなければ。

光は常に一直線

本来、光は常に真っすぐ・最短距離を一直線で進むという性質がある。それにも関わらず、ブラックホールによって光が曲げられているように見えるのは、実は光ではなく空間が曲がっているからだ。光自体はどんな誘惑にも負けず、ただ、前を、ひたすら前を(キム○夕風)、常に最短距離で進んでいる。ニンゲンに例えると、常に合理的で最適な行動をし、酒も女もゲームも無駄な遊びは一切しない…みたいな感じだろう。もしくは宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」のよう人だ。そういうものに、僕もなりたい。(※無理)

さておき、そんなスーパーまっすぐ君の光は、歪んだ空間の中を、そうとは知らずにあくまでも最短距離で真っすぐ進んでいるだけなんだ。安心してください。彼は歪んでいるように見えても、昔の童貞時代に「最初に付き合った女と結婚する」とか行っていた頃のピュアなアイツのまま…悪いのは空間だっだんだよ。そんなふうに、君たちの周りに、ブラックな人や会社と関わってしまっている事に気付かず、歪んだ人生を送っている人がいたら一般相対性理論を持ち出して説得してあげよう。「そこ重力強すぎだよー」と言ってあげるといいだろう。

ニンゲンの重力

太陽やブラックホールと比べてしまえば、僕らニンゲンというちっぽけな天体はあまりにも小さい。空間に及ぼす物理的な影響は取るに足らないものだ。だが、それは確かに在る。君はそこにいるだけで、空間の形を変えている。みんな重力を持っている。確かに、物理空間での影響は感じないかもしれないが、ときに、ひとりのニンゲンの存在の“重ざを感じることは誰もがあることではないだろうか?たったひとりの誰かが、『そこにいる・いない』だけで、不思議とその場の“重ざみたいなものは変化する。ひとりで部屋にこもっているときに、ふいに誰かの気配を感じた数秒後に外から人の足音がしたり…別れていなくなってしまったはずの人が、まだそこにいるように感じたり…それは「気配」や「面影」といった非科学的な類いのものだ。物理上の重力とはもちろん別のものだ。

しかし、これはロマンティック物理学なので、そういった「気配」とか「面影」といったものも含めて「重力」だと捉えたい。だって、そこに「重さ」があるからね。わかるでしよ?そういう感覚。存在があって、重さがある。だから空間が歪んでいる。逆に考えれば、「気配」や「面影」を感じるとき、その空間には目には視えないけれども、重力のように確かに存在する何かがあるのではないか。もし、そうだとしたらロマンティックだし、生きることや死ぬこと、出会いとか別れとかに、もう少し整理がつきやすいんだろうな…。

さて、次回も引き続き、一般相対性理論をテーマに好き勝手書いて行こうと思う。今回は重力は「空間」を歪めるという話。次は「時間」です。…今回もメ切の時間に間に合わなかった事は言うまでも無い。(反省)


フリーダム・ディクショナリー
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