SEALDsインタビュー
牛田 わざわざ国会前で、「国会前には出会いを求めに来てるんですか」って質問されるんですよ。ブチ切れちゃいますよね(笑)
桑原 まあそれもあってもいいけど、副次的なことだよね。(笑)
牛田 僕らの目論見としては、実は二つあって、単純に声をあげたいっていう部分もあったんですが、もう一つは、文化を変えたいっていうか、「何がクールか」の言説自体を変えたくて。dictionaryほど先鋭的ではないけど、例えばSEALDsのパンフレットを見たときに一般の人が手にとって「かっこいい」と思えるものを意識してやっていて、その両方が重要だったのかなって。つまり、ある程度学者に認められるくらい知的に、ちゃんと勉強してステートメントを出して、かつ、アーティストにも認められるくらいオシャレなものにする。その二つがそこそこのレベルまでいったので、文化をまたいでメディアになれたっていう所があると思います。
桑原 最初は何人くらいではじめたんですか?
牛田 けっこう歴史がいろいろあって、SEALDsの前にSASPL(特定秘密保護法に反対する学生有志の会)があったんですが、それのもっと前に反原発デモのときに、学生がみんなでデモを見に行ってみようって呼びかけてて…
桑原 それは何年くらいの話?
牛田 2012年の僕が大学に入ってすぐの頃なんですが、僕は一年浪人していて、SEALDsの奥田がそういう活動をすでに初めていたんですね。それに行くようになった。それがちょうど反原発デモが収束していった時期で、だんだんそのデモで会った人たちとも会わなくなっていったんですけど、特定秘密保護法のデモの時に、個人として、皆と連絡もとらずに、「これは行くしかないよね」みたいな感じで行ったら、皆がいたんです。
桑原 ひとりでというのがいいね。普通は「誰かついてきてよ」ってなりがちじゃない?
牛田 だからそういう人も来れるように、奥田君は間口を広くして活動してたんです。だから求心力がすごくあったんです。僕は逆にひどくて、「勉強してないやつはくるな」とか言ってて。今はそんなことないんですけど。
桑原 奥田君は牛田君と同じ年齢なんですか?
牛田 はい、タメです。今年23歳で。
神宮司 僕は全然上で、いま大学院生で26歳です。秘密保護法のデモも一人で行ってたんですけど、そこで見たのは割と年齢層が高い人たちで。けど、その中で異様なエネルギーを放って、声をあげている若い集団がいたんですよ。10人とか、20人くらいいて。そこだけ明らかに異質で、「なんなんだこの人たち」と思って。それで、後からこの人たちがSASPLって人たちなんだってわかったんです。SASPLって調べたらYouTubeで映像が出てきたんですが、それをみると映像の感じとか、音楽のセンスとかも明らかに今までのデモとは違うなって思って、これは面白いなと思ったんです。それまでも、行ける時はいろんなデモに行ってたんですが、SASPLのデモの時は参加する時の意識が少し変わる感じでした。その時、SASPLにはメンバーとしては参加してなかったんですが、牛田君とはあるきっかけがあって仲良くなって…
牛田 ある哲学者についてのシンポジウムがあったんですよ。神宮司くんとは同じ哲学を勉強しているんですけど。
神宮司 そう、仲良くなったきっかけが二つあって、音楽と本なんですよね。会った時に、D’AngeloのBlack Messiahがちょうどでるって話をして…
牛田 僕そのときすごいワクワクしすぎてて、その話を誰かとしたいと思ってたんですけど、D’Angeloってあんまり日本だと一般的にはそこまでは有名じゃないじゃないですか、だから「D’Angeloって人がいて」って話をしてたら、神宮司くんもD’Angeloが好きで。J Dillaとかもお互いすごい好きで、意気投合しました。
桑原 おしゃれだね。(笑)
神宮司 D’AngeloとJ Dillaの話ですごい近くなれて(笑)
桑原 ブラック・ミュージックと哲学?すごいな。
神宮司&牛田 たまたま(笑)
桑原 哲学って、どういう哲学なの?
牛田 フランスの思想なんですけど、さっき話にでていた内田樹さんとか…
桑原 大先輩だ。二人ともフランス哲学なの?
神宮司 そうですね。
桑原 じゃ、ルーツはパリ五月革命のフランス哲学だよね。(笑)
注:1968年5月パリの学生運動に端を発し,フランス全土に広がった社会変革を求める大衆運動。
神宮司 かもしれないです(笑)
牛田 フランス系の哲学者は見た目もオシャレですし(笑)
一同 (笑)
神宮司 そのときのシンポジウムは今の活動とも繋がっていて、ジャン=ピエール・デュピュイというフランスの哲学者なんですけど、「賢明な破局論」というのを提唱していて。
牛田 「賢明な」とか「啓蒙された」って形容詞がついているんですね、「破局」に。普通はこれは真逆の言葉なんですよ。破局って終末思想とか、宗教的なものなんですけど、それに「理性の光が照らされた」って真逆の形容詞がついていて。ちょっと異様な哲学なんですよね。ざっくり言うと、戦争って気づいたらその中にいるものなんですよ。気づいた時には遅い。原発事故とかもそうで、その災厄が起きるってことは「知って」はいたけれども、「信じる」ことができなかった。だから、気づいたらその局面の中にいたっていうのが、本当の大惨事なんです。つまり、大惨事は必ず想定し得ないものなんです。リスクで計算しても想定し得ないので、もう「確実に起こるよね」って決めちゃうんです。
神宮司 未来に確実に破局は起こってしまうということを仮定する。
牛田 信じるんですよね。一度信じた上で、その未来から時間を遡って今を捉えて、その未来をどう乗り越えられるかというのを考えようっていう。そういう思想なんです。
桑原 ある種の未来論なんだ。
牛田 そうです、未来論、時間論なんです。時間を逆戻しにするっていう。
神宮司 先にちょっと未来に行って、Back to the Future みたいなものですよね(笑)未来の破局を絶対に起こさないために、今やるっていう。
桑原 Back to the Future二人とも好きなの?
牛田 まあ、好きです(笑)
桑原 いいなあ、それ(笑)
神宮司 だから今やってることも多分近くて、その時、未来で何か破局が起きた時に絶対後悔したくないっていうか。だからもうそれが起こることを先に仮定してしまって、でも絶対にそれを起こさないために、今やれることはやるっていうことだと思います。