SEALDsインタビュー
桑原 めちゃくちゃかっこいいね。でも、未来をどう見るかっていう訓練とか、どういう風にするんですか?
牛田 結構難しいですよね。でもネイティヴアメリカンの知恵とかも、その哲学書で引用されているんですけど、彼らは大地を子孫から借りたものだと考えているんです。例えばヨーロッパ的な時間の観念だと時間は前に進むだけで、絶対に戻ってこないし、直進して発展していくっていう未来の考え方しかないんですけど、他の文化を見た時にはそうじゃない。例えば言語的に「過去」と「未来」っていう言葉がそもそもなくて、「今」っていう言葉しかないっていう部族がいたりだとか、それこそネイティヴアメリカンは未来から逆算して自分のいる時間を考えているとか。そういう時間の見方があるはずだと思うんですよ。そういう意味では、フランス思想の面白いところって、ヨーロッパ的な知の枠組みがあった時に、そこから一歩はみ出ちゃうんですよね。
桑原 オルタナティヴなんだ。
牛田 そうなんです、必ずオルタナティヴなんです。それをフーコーとかは”Think Different”、フランス語だと”Penser Autrement”って言うんですけど、そのヨーロッパ的な知の枠組みからは…
桑原 Think Different ってアップルの?
牛田 そうです、実はそれの元ネタがフーコーなんですよ。Penser Autrementが、Think Differentになったっていう。
桑原 良い話ですね、今日は。熱くなりますね。(笑)
牛田 進化論的に前に進むんじゃなくて、横に一歩踏み出してみるっていう。横から自分をみつめてみるっていう思想がずっとフランスにはあって。そういうことをずっと考えてます。
神宮司 さっき言っていたデュピュイのシンポジウムの休憩時間に、こういう「未来」の考え方って何となくどっかで聞いたことあるなって思ったんですよ。それがSASPLのデモで至(いたる)くんというメンバーがスピーチで言っていたことで。彼は、「僕は狼少年になろうと思います」って言ってたんですよ。その時は、秘密保護法が通ろうとしていた時で、それが通ったらどれだけひどい未来がやってくるかわからない、だからそれを止めるために、今ここでその危険性を主張することで、人々がその危険性に気づいて、その未来が来ないものにする、つまりその危険な未来が来るっていう主張が、結局は嘘になるべきなんだって言っていたんですよ。
桑原 なるほど。
神宮司 狼少年になることで、その未来を回避するっていう。これってデュピュイと一緒じゃんっていう話で、そのシンポジウムの休憩時間に二人で盛り上がっていました。
牛田 そうなんです、何か深淵な難しい哲学書を書かなくても、SASPLのメンバーで、一番特定秘密保護法についてめちゃめちゃ1年や2年間勉強していた奴が、そこのエッセンスを自分の言葉にして言ってたっていう。哲学を越えてるっていう。(笑)
桑原 かっこいいー。(笑)
牛田 それで僕ら感動してて。
桑原 そのかっこよさって、音楽には乗っからないんですかね?
牛田 いや、乗っかる、というか乗っけたいていうか。
桑原 乗っけたいですよね、愛だの恋だの、聞き飽きましたから。(笑)
神宮司 そういうことで言うと、僕が、SEALDsに加わったきっかけは、牛田くんとか、会った人がみんな音楽が好きすぎたり、本が好きすぎたりする人たちだったからなんです。
牛田 呪われてるんです。(笑)音楽とか本が好きすぎるみたいな(笑)
神宮司 この人たちなら、面白いことできるんだろうな、と思って。僕もずっと音楽が大好きで、そういう話を出来る人たちがSEALDsには集まっていた。さっきの桑原さんの話だと、レゲエとかをちゃんと聞くと、ボブ・マーリーとか本当にすごいですけど、やっぱり根底はレベル・ミュージックで、メッセージがあるじゃないですか。そういうメッセージの部分で影響を受けたりする人たちって絶対に多いと思うんですよ。あと、ヒップホップですね。そういう話とかしていたりする時に、牛田くんが言っていた話で僕がすごく好きな話があって、「俺らはゲットー・ブラザーズ(The Getho Brothers)なんだ」っていう話で。本当に初期のヒップホップの人たちなんですけど。
牛田 『ヒップホップジェネレーション』っていう本を読んでいて、ヒップホップが生まれる歴史の話になっちゃうんですけど、ゲットーで、超殺し合いとかをやっていたギャングたちがいたんですけど
桑原 もちろん知っていますよ。(笑)
牛田 すいません。(笑)ゲットー・ブラザーズっていう、ゲットーの中で争っていたギャングたちの中で、ファンクとかソウルの音楽によって和平を求めていた奴らがいて、そういう音楽とかで和平する、集会を開いたりしていたんです。でも、そのゲットー・ボーイズのボス二人が、ヘロイン中毒とか、刑務所で亡くなってしまって、二人とも死んじゃうんですよね。そうしたら、ゲットー・ブラザーズが和平を求めて頑張ってきたはずなのに、ゲットーの中はもう全然駄目になってしまったんです。しかも今まであった集会も、それぞれのギャング達は、和平なんてただのフィクションだと思ってたっていう。ただ全然見せかけだけだ、体裁だけだと思っていた。それで保たれていた和平はもう駄目になっちゃったんですよ。でも、そう思ったら、実はその和平の集会の中に、後のアフリカ・バンバータがいた。それで、この和平を一瞬でも見ていたアフリカ・バンバータは「いや、これが大事なんだ」って思って、その理想を持って、後に「ヒップホップ」の祖になった。でもそれは、ゲットー・ブラザーズの失敗と、成功を引き継いだから出来たんです。
桑原 マンハッタンのクラブで、アフリカ・バンバータが一番最初に「ヒップホップ」をやった時、その場にいたんですよ。(笑)
神宮司&牛田 ええーーーー!
牛田 すげーー。それやばいですね。
桑原 マンハッタンのクラブ「ペパーミント・ラウンジ」だったかな?頭でスピンしてる少年たちがいるわ、アフリカ・バンバータの衣装は演歌だし、やってる曲はKraftwerk – Trans europe express (笑)もうわけがわからない(笑)
神宮司 だから、多分何かを生み出したり、行動を起こすことって、例え失敗したとしても、それを見ている人たちがきっと何かまた始めるんですよね。だから、いまSEALDsがやってること、これから何が起こるかわからないですけど、でもここで今やることが、次の誰かに繋がるかもしれない。だから、そこに希望がある。もしここでダメだったとしても、それで絶対終わりじゃない、また始まる。だから、一番やっちゃいけないのは、きっとただ諦めて何もしないことなんだと思います。そして現に、いまもう謎の高校生団体が生まれたりしているんです。
桑原 本当に?
牛田 はい、ティーンズ・ソウル(T-ns Sowl)っていうんですけど。
桑原 ネーミングがやばいね。(笑)
牛田 超かっこよくて、関東だけで20何人いて、それがもうデモを企画して、6000人集めちゃうみたいなことをやっていて。しかもT-ns Sowl東京だけじゃなくて、T-ns Sowl Westとか、T-ns Sowl North とか、各地でめっちゃかっこいいことになってる(笑)
桑原 SEALDs危うし(笑)
神宮司 (笑)でもそれが望んでいることっていうか。皆がそれぞれで勝手にやり始めればいいと思っています。
牛田 面白いのも、サウンドも変わってて、EDMなんですよ、もう(笑)
桑原 そこはちょっとなんとかしてくれないかなー。(笑)
牛田 僕もEDM嫌いなんで
桑原 いいよ、もう、好きになっちゃう。(笑)
牛田 そうなんですよ、新鮮なんですよね。例えば、昔は「アベはーやめろー」みたいな感じでコールも遅かったんですよ。それで、僕らは「アベはヤメロ」、「ア・ベ・はヤメロ」とか二拍三連になったりとか、Hip Hopだったんですけど、今度はもっと速くなって、コールも、なんか「とりま廃案、それなそれな」とか(笑)、「裸の王様 誰だ(誰だ)」とかいっていて。
桑原 素晴らしい。
牛田 「アイドンニージュー、アーベー、アーベー」とか言って、すごいやばいんですよ。感覚がフレッシュなんですよ。もうついていけないっていう。僕も。(笑)
桑原 現場に行きたい。(笑)