とある桑原 茂→の Peace Songs Book を触歩く その一 京都探訪編 [後編]
恵文社一乗寺店
一乗寺駅に来た。
あの伝説の恵文社一乗寺店だ。
広い店内は、いくつも、いくつも、それぞれのジャンルにコーナー分けされている。まるで書店版細いディズニーワールドだ。
今や京都の新たな観光地であり、書店を情報の発信基地に変えた「恵文社・一乗寺店」を訪ねた。
お話を伺ったのは、下條ユリちゃんの大親友でもある友田るみさん。
A のっぴきならないことがあって私は福岡から逃げるように京都に来たんです。不動産回ってこっちがいいなぁ〜とこの一乗寺へ
Q お勤めしてどのくらい経ちますか?
A 5~6年ほどですかね。
Q なぜ、こちらで?
A 福岡に「キューブリック」っていう大好きな小さな本屋があって、離れるのが寂しかったんです。ここは、たまたま通りかかったら、とてもよくて、ここでも生きていけるなって、
Q 品揃えの方針とかは?
A 私の役割は、地方から発信される普段見ることない書籍を発掘することとか、出会いですね。
Q そのリスクを受け入れてくれるオーナーの存在が素晴らしいですね。
A 私たちをとても信頼してくれています。私はお店のスタッフというより、この町の住人でもあるので、八百屋さんのように、美味しいよ、新鮮だよって、最後の一冊まで売り切る気持ちでやってます。
ここはもともと職人さんたちの町で、そこへ学生さんやら外国の方やら私のように他の街から来て住んでる人が多くて、京都の閉鎖的な感じは全然なくて、みんなとてもオープンで暮らしやすいところなんです。だから、私も町の人たちのお役に立ちたいという感じで働かせてもらっています。
友田るみさん 三冊選びました。
・京都を拠点とした「編集グループSURE」の本
・昔から当店にならぶ、もはや景色の一部のような「図案辞典」
・古書店主の方々当店がと一緒に作った、読書愛を喚起する小冊子。
<セミナーシリーズ1> 『論語』を、いま読む
著者 井波律子・鶴見俊輔
発行 編集グループSURE
京都を拠点に活動を続ける「編集グループSURE」の代表的シリーズ「セミナーシリーズ 鶴見俊輔と囲んで」の第一回。中国文学者の井波律子氏を招いて、鶴見氏も若者も車座となり孔子の思想を軽やかに論じあうダイナミズムが伝わる一冊。
図案辞典
企画編集 野ばら社編集部
発行者 志村文世
年賀状・葉書・ポスター等にすぐに使える図案がぎっしり。デザインに便利な構成図案や古典図案、文字図案も。無限の工夫で飽きることなく眺めていられます。初版発行は1949年3月。長年多くの方に手に取っていただいています。
古本屋がえらぶ 気ままにオールタイムベストテン
発行 恵文社一乗寺店
当店恒例の「冬の大古本市」にあわせ2016年に制作した小冊子。24店舗の個性的かつ魅力的な古書店主が、独自のくくりで「気ままに」選んだ、あの時この時のベストな10冊をエッセイと共に語りろした一冊。表紙はひろせべにさん。一日の業務を終えた古書店の主人が、ひとりのただの本好きの読書人となった姿が描かれました。読書の楽しさ、古本の魅力ぜんぶひっくるめて本の持つ面白さが伝われば!
表紙の美しい本は眺めて楽しんでいただいたり、背表紙をたどって歩くと思わぬ出会いにぶつかるようなお店になりたいと日々努めながら、併設するギャラリー、イベントスペース、雑貨フロアとともに、様々なカルチャーを紹介しています。
友田るみ
〒606-8184
京都市左京区一乗寺払殿町10
電話: 075-711-5919
FAX: 075-706-2868
私が恵文社 一乗寺店で買った本
誠光社
書店は商品棚が全てだと認識した。
「モラトリアル」という言葉が記憶された。
京都の街には、精神は学生のまま社会に出て暮らす人たち「モラトリアル」が作り出す文化という一面がある。と、そしてレイヤーがいくつもある街だという。そのどこへアクセスするか?又、京都の街は、現場に立っている人が一番尊敬される。店と人が合致している。店主同士の関係性が非常に大事だと。訪れる度に感じる京都の凛はこれだったのか、誠に納得した。
「本屋のあるべき姿とは」
堀部さんご自身を表す選書本を常に8割陳列すること。その8割から生まれるイベントを定期的に行う空間を確保すること。友人たちとコラボする為のギャラリーの設置が必要。すべての無駄を排し生活をシンプルにすることで「誠光社」は生まれた。店主堀部さんのお話しはまるで有次の柳刃包丁のように美しくシャープでスーとした切れ味がある。京都人の矜持に魅了された。
一冊好きな本をお知らせいたします。
『ギンズバーグが教えてくれたこと 詩で政治を考える』
ヤリタミサコ著/トランジスタプレス刊
ギンズバーグといえばビート、ビートといえばジャズと東洋思想といったステレオタイプなイメージを抱きがちですが、ギンズバーグが他界したのは1996年。ケルアックやニール・キャサディが他界したのちも精力的に詩作や運動を続け、1970年代後半以降はザ・クラッシュやアーサー・ラッセルと共演し、CIAやジョージ・ブッシュを名指しで批判しました。詩と政治、その結びつきを考える一冊です。
堀部 篤史
〒602-0871
京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437
TEL FAX 075-708-8340
s-contact@seikosha-books.com
http://www.seikosha-books.com
peace songs book見る人が見ればわかるはず。書籍にも、そこはかとない(反戦選曲)への意志がデザインされている。
レジカウンターの辺りに店主の感性が溢れている。
堀部篤史さんと店。凛とした佇まいがまさに京都の風格。京都で暮らしてみたいと思わせる人。
私が誠光社で買った本とCD
生きることはこんなにも簡単で楽しいものか。美味しい。楽しい。嬉しい。いしいしんじ。の無限ループ in 京都&more。読んでいる私も京都の住人になれる魔法の書。
ちゃんとした人たちのちゃんとした生き方がわかる人生の指南書。私にはもう間に合わない。
古くからの友人の銀座の社長が大好きな曲「サマータイム」を発見。お土産のつもりで買った。
ホホホ座
下條ユリ作品 人口とは異なる意味のポップなお宮。ここにお参りしてホホホ座の門をくぐれば、そこは極楽也。
やけに本が多い土産物屋?納得。
左 山下賢二 右 松本伸哉 見ての通りのお二人です。思想のない人に商いないはできない。と、目と目がそういうのよね。商いは飽きないことがすべて、ホホホ‥
無駄にハンサムな山下賢二さんにお話を伺った。
山下(Y)桑原 (K)
Y 京都は、「KYOTO」っていうテーマパークなんじゃないかと思っています。区(エリア)ごとに特徴があるゾーンがあって、寺社仏閣や地元のお店はそのアトラクションで、来場者たちがそれを順番に回っていく。「KYOTO」のメインターゲットは、30~40代の女性。僕が十年以上、店をしている左京区は、大学が多くて、新しい住人が毎年やってきます。先生や学者もいるから、アカデミックな人脈やヒッピー思想の人たち、学生時代からそのまま居ついたミュージシャンなんかもブラブラしてます。どちらかというと個人事業主が多いから通りを歩いていてもネクタイをしてる人をあまり見ません。山・川・池・田んぼ・畑も少し奥に行けばあるから、街というより村という感じですね。かと思うと、京都の碁盤の目の下の方にある西陣エリアなんかは、ネイティヴの人たちががっちり脇を固めていて、新参者はそこに馴染むために通過儀礼のようなコミュニケーション術が必要だったりします。
K でも一度受け入れてもらえると大切にしてくれるんですよ。
Y その輪の中に入れたら、ですね。
K さて、店名のホホホ座の由来ですが、三つホが並んでいるのは?
Y シンメトリーです・縦も横も、一本の線で繋がる。見た目だけのもんで意味はありません。
K 本屋と呼ばれたくない。というのはどういう意味なんですか?
Y 読書という行為のハードルが時代とともに上がってきているのを感じます。
僕は、アプリぐらいの手軽さと楽しさを提案できたらと思っています。本には、インテリと、インテリアの要素がパッケージングされています。かつては読書イコール教養という幻想がありました。また、その幻想のために本は棚に並べるだけで実際に読んでいなくても自分のバックボーンとして取り繕うことができました。僕はそういう幻想は取っ払いたい。こんな時代だからあえて、読書行為は<娯楽>なんだと言い切るようにしています。本は勉強道具じゃなくて、コストパフォーマンスのよいソフトでありハードです。そういう意味でも、フラットにお土産という言葉を使います。インターネットのワンクリックではついてこない、店に行くまでの思い出や店内の空気。商品とともにそれを持って帰ってもらう。ホホホ座は、<本が多いお土産屋>です。フラットに他の商材と同じように店内で出会ってもらう。買い物には、発見の買い物と確認の買い物があると思うんですけど、ウチは完全に前者の店です。スマートフォンをいじってる人たちにどうやって読書の楽しさを使えるか?僕は、読書ブーム、つまり、読書行為そのものをブームにしたいと思っています。
ホホホ座は、現在全国に6店舗の支店があります。業種は全部違っていて、広島県尾道市はお菓子屋さんだし、愛媛県今治市はライブスペースです。業種が違えば違うほど、グループ内で商品をシャッフルする楽しさがあります。それは別に店でなくても人がいなくてもよくて、例えば、コインランドリーでもいいと思っています。要はホホホ座というキーワードを使って、それぞれの街でCMしてもらう、それぞれが違うホホホ座との出会い方をするのが面白いなと思って、
あと、もひとつ言えば、ホホホ座の基本は編集企画グループなんですよ。二階の松本も、100000tアローントコの加地も、同じ編集チームなんです。直売処を持ってるバンドのような編集チームなんです。冒頭でユリッぺ(下條ユリ)が宣伝してた【なのにあなたは京都に来たの】も含め三冊が今同時進行して発売を待ってるんです。
K ブラボ〜!
で、Peace Songs Bookは書籍ですが一種のパフォーマンスでもありんす。平和を選曲する。これは初代選曲家のミッション・パッションだと思って作りました。布教活動?は、これからなん火傷(笑)是非、私も混ぜてくんなまし。
山下賢二 選書
「二〇一二」田口史人(円盤)
元OZディスク主宰。非流通制作物販売店、高円寺円盤店主のインディーズ音楽界隈をぶった斬った日記、インタビュー、エッセイ集。アーティスト面の地べたのミュージシャン達との日々を再考。時には実名も出し、彼らを愛を持って、拒否する。インディーズという言葉自体を田口さんは受け取らない。自己表現という言葉をバラバラに解体し、誠実に切実に享楽的に音楽を楽しむことを覚悟させられる背筋の伸びる一冊。
山下賢二・松本伸哉・加地猛・早川宏美による編集企画グループ。
著作に『わたしがカフェをはじめた日。』(小学館)ほか。
京都市左京区浄土寺に<やけに本が多いお土産屋>として自身のアンテナショップを2015年4月オープン。現在、全国各地に、異業種のホホホ座を展開(お菓子屋、イベントスペース、喫茶、古本屋、出張店舗専門)。
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ホホホ座 山下賢二
〒606-8412 京都市左京区浄土寺馬場町71 ハイネストビル1階
TEL 075-741-6501
http://hohohoza.com/
私がホホホ座で買った本。
何度見てもワクワクする。やっぱり人間は宇宙人だ。
日本人を肯定させてくれた名著「逝きし世の面影」の渡辺京二さんにお話を伺いたくてあの茂木健一郎さんと熊本のご自宅へ伺ったことがあります。その渡辺さんが執筆されている熊本発の文芸雑誌と聞いてはありがたく入手さていただきます。
ランチのお礼だと言って本人から頂いた。感動した。本屋が分かる。小商いが分かる。人が分かる。生きる希望が湧く。選曲家が1日で澄み切った青雲小説。
最後に京都探訪の道標を教えてくれた下條ユリちゃんに天上の感謝を。おおきに。そして、ユリちゃん経由で再会した小崎哲哉氏 吉田屋料理店にも多大なる感謝を。
桑原 茂→